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余録

「銭形平次」の作者である野村胡堂は…

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 「銭形平次」の作者である野村胡堂(のむら・こどう)は明治中ごろの学生時代に初めて飲んだビールについて回想している。「あの苦々しい奇怪な酒をどうしたら好きになるだろうと思ったことを、今でも忘れません」▲学生がビールを飲むようになったころの話で、やがてその苦みをおいしく感じるのが大人の証しという時代になっていく。それが今や逆に若者たちに問い返される世になった。「なぜ苦いものを好きにならなきゃいけないのか?」▲何にでも単位というものはあるもので、ビールの苦みを表すのはIBU(国際苦味(にがみ)単位)という。ちなみに日本の大手メーカーのビールは20前後、40とか50で苦いビールとされるが、なかには1000というとんでもない製品もある▲最近このIBUを目にするのは、個性的な風味が売り物のクラフトビールの味の表示でよく見るからだ。昔の地ビールも今はクラフトビールと呼ばれ、若者のビール離れに悩む大手業者も独自のクラフトビール販売に力を入れ始めた▲何しろ出荷量が13年連続マイナスというありさまのビール系飲料である。ところがその中でクラフトビールは当の若者層に人気で、前年比2割増の市場拡大が見込まれているという。メーカーとしてはまさに知恵の絞りどころだろう▲どうも「苦み」より「とりあえずビール」の没個性への拒否反応にも思える若者のビール離れだ。お仕着せの味への順応でなく、ビールを選ぶ「好み」の洗練こそが大人の証しだと言われてはおじさんの負けである。

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