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目は語る

6月 ルーヴル美術館所蔵の「肖像芸術」展 光る構成と珠玉の作品群=高階秀爾

 「肖像」は、美術展覧会にとって、必ずしも人気の高いテーマではない。絶世の美女か名高い英雄ならともかく、遠い昔のよく知らぬ人物の肖像など、およそ芸術的感興に乏しいと考えられているからであろう。

 だが実際には、肖像は絵画の歴史の上で大きな場所を占めている。そればかりではなく、そもそも絵画の起源は肖像にあるという議論すらなされた。古代ローマの博物学者プリニウスは、大百科全書とも言うべき『博物誌』のなかで、ギリシャの陶工ブタデスの娘が、旅に出る恋人の姿をとどめるために、ランプの光で壁に投影された顔の影の輪郭をなぞったと伝えている。それが絵画の始まりだというわけである。プリニウスはさらに、陶工がその影に基づいて粘土で頭部像を作ったとも述べているので、それは彫刻の始まりでもあるということになる。

 このエピソードの真偽はともかく、肖像が不在の人の「身代わり」の役割を負わされていたことは、疑いのないところであろう。死者の面影を伝える葬礼肖像や墓碑彫刻はむろんそうであるし、さらに、宗教的礼拝の対象であるイエス・キリストの姿も、十字架の道行きの途次、「ヴェロニカの布」にその顔が写し出されたという伝説に支えられている。肖像の持つ意味は、深く、重い。

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