メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

バイオリン・正戸里佳

挑む30代へ、祈りを胸に 先月デビュー盤

「ベートーベンは理想に向かって突き進むようにして芸術性を構築する。全10曲それぞれの魅力がより伝わるような演奏をしたい」と話す正戸里佳=大阪市北区で、木葉健二撮影

 パリを拠点にするバイオリニストの正戸里佳が5月にデビュー盤「パリのバイオリン・ソナタ集」(キングレコード)を発表し、日本での演奏活動を本格化させている。2006年、17歳で難関のパガニーニ国際コンクール第3位となり、09年に渡仏した。「フランスで学んだ10年間にコンサートで弾く心構えを身につけ、音楽で表現したいものが深まった」と語る。

     名刺代わりとなるデビュー盤には、ドビュッシーとラベル、プーランクという仏を代表する作曲家のバイオリンソナタと、ソナタとは違う作曲家の個性が見えるような小品を選んだ。プーランクのソナタは、仏の巨匠ピアニスト、ガブリエル・タッキーノとの共演で初めて弾いた思い出の曲。タッキーノは、ピアニストでもあったプーランク唯一の弟子だった。作曲家の人柄やどんな演奏が好みだったかを聞いたり、楽譜への直筆の書き込みを見せてもらったりして一気に身近に感じたという。

     ほかの収録曲「平和のためにお祈りください」は、15世紀に書かれた詩にプーランクが第二次世界大戦前夜の1938年、曲をつけた歌曲。正戸は広島市で生まれ、高校進学で上京するまでを過ごした。海外に出て、ヒロシマは世界的に特別な場所だと実感したという。「『平和』と言うとどこか偽善的だったり夢物語のように聞こえたりするけれど、広島からの訴えには切実さがある。いろんな機会に発信していきたい」。バイオリンで演奏されるのは珍しい曲だが、怒りや悲しみに耐えているかのように静かに奏でられる音色が胸に迫る。

     16年に仏で初開催されたドミニク・ペカット国際コンクールで第1位となった。日本で大勢の人に演奏会に来てもらうきっかけとして、コンクールの結果は重要と考えている。「でもコンクールで評価される演奏と、人々が演奏会で求める演奏は違う。結果には誇りを持っているけど、コンサートでは私が『音楽で何を伝えたいか』を楽しみにしてほしい」と語る。

     7月から神戸新聞松方ホール(神戸市中央区)で、ベートーベンのバイオリンソナタ全曲演奏会(全3回)を開く。「継続して取り組んできた作曲家なのでいつかは全10曲を弾きたいと思っていたけれど、まさかこんなに早く実現できるなんて」と喜ぶ。ピアノは99年リスト国際コンクール第1位で、ベートーベンのピアノソナタ全曲(32曲)演奏会を成功させた岡田将。「ピアノが築く土台によって、バイオリンが表現できる幅は変わる。経験豊富な岡田さんとの共演は楽しみ」と期待する。

     20代最後の年に念願だったデビュー盤を出して新たなスタートを切った。「フォーレやサンサーンスにも取り組みたいし、ブラームスのソナタやベートーベンの協奏曲も弾きたい。シューマンやシューベルトのソナタも……」。30代で挑戦したいこともあふれかえっている。

     全曲演奏会の初回は7月1日午後4時開演。松方ホール(078・362・7191)。【田中博子】

    関連記事

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 藤枝小4切りつけ 「いじめの復讐」 18歳容疑者説明
    2. カネテツ ウナギ高騰 本物そっくり「ほぼうなぎ」販売
    3. 子育て世帯 平均年収683万円 5年前より86万円増
    4. サッカー日本代表 トルシエ氏 1次L突破「可能性ない」
    5. 名人戦 佐藤が3連覇 4勝2敗で羽生降す

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]