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自身の冤罪事件について語る陳龍綺さん。Tシャツには「自由人」の文字が=台湾で4月、石山絵歩撮影

 「(弁護側鑑定を検証した専門家に対し)同じ器具を使って再現実験をしなかった理由は?」(弁護士)

     「(弁護側鑑定の専門家に対し)絶対に正しい型が出るように鑑定したのか?」(検事)

     昨年9月の東京高裁。静岡地裁が袴田巌元被告(82)の再審開始を決める“根拠”となった弁護側DNA型鑑定を巡る非公開の証人尋問があり、弁護側と検察側は自らの主張に沿わない専門家をそれぞれ厳しく追及した。高裁は11日の決定で、弁護側鑑定の信用性を疑問視し、袴田さんの再審開始を覆した。

     科学の領域である鑑定の正否を裁判所が判断することについて、反発する専門家は少なくない。自らの鑑定手法や見解を裁かれたくないと、司法への協力を尻込みする学者もいる。「法と科学」を研究する渡辺千原・立命館大教授(法社会学)は「科学と司法には共通言語がない。裁判官が判断しやすいよう、法廷で科学者同士が対立するのではなくて別の科学者も含めて話し合い、客観的な結論を出せる仕組みが必要だ」と話す。

         ◇

     袴田さんのケースや過去の再審無罪事件の教訓を踏まえ、刑事弁護に取り組む弁護士らからは「刑確定者が求めた場合にはDNA型鑑定を義務的に行う制度が必要」との声が出ている。法律上、審理ルールが明確ではない再審請求審では裁判官の裁量が通常の公判よりも大きいとされ、DNA型鑑定を行うかどうかも「胸三寸」という状況にあるためだ。

     台湾では2016年、刑確定者が求めれば警察や検察がDNA型の再鑑定を行わなければならないと定める「DNA法」が成立した。きっかけは日本でいう「強制性交等罪」の冤罪(えんざい)事件だった。

     09年に起訴された陳龍綺さん(46)は捜査機関による古い手法のDNA型鑑定に基づき、有罪が確定した。だが、冤罪被害者支援を進める市民団体「台湾イノセンスプロジェクト」が台湾大学の学者に新手法のDNA型鑑定を依頼し、再審無罪を勝ち取った。事件と裁判の経過は大きく報道され、立法に結びついた。

     陳さんは「子供のためにいったん戸籍上の離婚をしたり、破産したりした。心の傷は癒えない」と事件を振り返る。同プロジェクト代表の羅士翔弁護士(34)は「人は間違いを起こす。科学技術の進歩に伴って常に法制度を変える努力をすべきだ」と指摘する。

     日本の有罪率は99・9%と諸外国と比べても突出して高い。逆にそのことが冤罪や誤判防止の法整備を妨げているとの指摘もある。司法が最新技術とどう向き合うのかという議論は途上段階だ。

    生きている限り、再審請求「努力」 袴田さん姉

     1966年に起きた「袴田事件」で、死刑確定後に静岡地裁の再審開始決定で釈放された袴田巌元被告(82)の姉秀子さん(85)が12日、浜松市中区の自宅近くの公園で報道陣の取材に応じた。東京高裁が11日に地裁の決定を取り消して再審請求を棄却したことに触れ、「生きている限り頑張るしかない」と、今後も再審を求めていく決意を述べた。

     高裁の決定を聞くため上京していた秀子さんは12日夕に帰宅。散歩中だった巌さんを公園に迎えに行った。元気そうな巌さんの表情を見て「今帰ったよ」と声をかけたという。

     高裁の決定には「長年闘ってきたのでごたごたしないし、巌が帰ってきているので悔しさはない。請求棄却も何とも思っていない。100歳まで生きるつもり。巌も長生きさせ、努力して頑張ります」と話した。【奥山智己】

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