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米朝首脳会談

友好演出、政治ショー

 【シンガポール武内彩、渋江千春、田辺佑介】1分弱の2人きりの「散策」で、和やかに会話を交わすトランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長--。シンガポールで12日に行われた史上初の米朝首脳会談は、長年敵対してきた両国関係の大きな変化と「友好」ムードの演出に腐心したものとなった。

    罵声一転、むつまじく

     米朝会談に先立って行われた4月の南北首脳会談では、金委員長と韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が軍事境界線近くの橋の上で2人だけで長時間話し込む姿が印象づけられた。5月に行われた中朝首脳会談では、金委員長と習近平・中国国家主席が通訳らも交えた少人数で海辺を散歩して談笑する様子などを捉えた写真が公表され、指をさして諭すようにも見える習氏の姿が北朝鮮の「後ろ盾」としての中国の存在を示しているとも評された。今回も首脳間の信頼感の醸成や交渉の順調さなどをPRするためには、わずかな時間であっても2人だけで言葉を交わす場面を設けることが必要との判断があったようだ。

     両首脳はまた会談中、互いにスキンシップで「親密さ」をアピール。顔合わせ時の握手ではトランプ氏が左手を金委員長の右腕に添え、その後もトランプ氏が金委員長に触れる場面が散見された。

     一方、共同声明の署名式で退出時、トランプ氏の背中に金委員長がそっと右手を添えた。数秒後、トランプ氏も同じように金委員長の背中に手を置いた。

     かつては「ちびのロケットマン」(トランプ氏)、「老いぼれ」(金委員長)と相手を口汚くののしり合ってきたが、今回の会談では一転し、言葉でも互いに相手を立てる丁寧な表現が目立った。共同声明の署名直後、金委員長は「この場を持つために努力してくださったトランプ氏に謝意を表する」と述べ、トランプ氏は金委員長について報道陣に対し「彼がとても有能で、とても国を愛していることが分かった」と絶賛した。

    「南北統一、まず一歩」 半島にルーツ、10代の声

     歴史的な米朝首脳会談は、朝鮮半島にルーツを持つ若い世代からも注目を集めた。

     在日コリアンが数多く通うインターナショナルスクール「コリア国際学園」(大阪府茨木市)では、全校生徒約90人が特別授業として教室などでテレビ中継を見守った。

     高等部2年の盧愛奈(ロエナ)さん(16)は「ピリピリムードの中で双方が笑顔で握手してくれたことだけでうれしい」と喜んだ。朝鮮戦争の頃に曽祖父らが来日。南北の分断で多くの家族がバラバラになった歴史を聞かされて育った。「南北が自由に交流、往来できない状態が続くのはつらい。今日の会談が南北統一の第一歩となってほしい」と願った。

     米国籍で高等部2年の都伽〓(トカヤ)さん(17)は「トランプ大統領がここまでこぎ着けるとは驚いた」と率直に語った。米国で生まれ育ったが両親は在日コリアンのため、朝鮮半島にも思い入れがある。非核化の合意を受け、「平和な方向に進むとうれしい。韓国と北朝鮮も近い将来一緒になることができたらいい」と期待した。

     関西を拠点に活動する「在日コリアン青年連合」の金和子(キムファジャ)さん(37)=大阪市此花区=も「会談を機に米朝が新たな関係構築に向けて交渉を続け、その先にある朝鮮半島の平和につなげていくことに大きな意味がある」と評価した。

     大阪市生野区のNPO法人「コリアNGOセンター」は「実質的に朝鮮半島での戦争を終結させ、平和体制に向かうことを明らかにした歴史的合意だ」と歓迎した。【岡崎英遠、金志尚】

    「独裁継続」憂慮相次ぎ

     北朝鮮国民の困窮を知る人たちからは、北朝鮮の体制保証とも受け取れる合意に疑問の声が上がった。

     2003年に脱北するまで約40年間、北朝鮮で暮らした大阪府の女性(68)は「過去には多くの餓死者も出た。国民の暮らしを考えない独裁が続くことになるのではないか」と心配する。

     女性は11歳の時、帰還事業で両親と一緒に北朝鮮に渡った。しかし、月2回の配給ではトウモロコシなど栄養の乏しい食料しか手に入らなかった。医療水準も低く、病弱だった母は満足な治療を受けられず40代で亡くなったという。核開発を続けてきた金委員長に対し、「とにかく国民にきちんと3食を食べさせてほしい」と注文をつけた。

     北朝鮮の内情に詳しいアジアプレス大阪事務所の石丸次郎代表は「金委員長にとっては『米国に体制を保証させた』と宣伝でき、満点に近い会談だっただろう。一方、北朝鮮住民にとっては抑圧や苦痛が続くことになり、残念だ」と話した。【金志尚】

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