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炎のなかへ

/179 アンディ・タケシの東京大空襲 石田衣良 望月ミネタロウ・画

その夜(14)

「お母さん、いきましょう」

 タケシはそういって、先頭に立って混雑する川沿いの道を歩きだした。亡くなった人のために謝ることなど、この炎を生き延びたらいくらでもできる。そういいたかったが、母親にそんなことは口にできなかった。

 街はどこもかしこも、火の色が見えないところはなかった。まだ火がついたばかりの家も数多かったが、十分もすれば家でなく家の形をなんとか保つ炎になってしまうだろう。

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