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書の世界

長沼透石遺墨展 深く楽しく革命的

「太虚」

 長沼透石遺墨展(19日まで、北海道・帯広市民ギャラリー)は、書の魅力について改めて考えさせられるだろう。

     長沼透石さんは1932年、帯広市生まれ。添田詩石さん、上田桑鳩さんに師事。高校の書道教諭として多くの門人を育てた。毎日書道展参与会員、奎星会相談役などを歴任。高校生の時、野球部のメンバーとして甲子園に出場、母校の野球部監督も務めた。2015年、82歳で死去。

     「こんなに書は深く楽しいものなのかと革命的に思いました」との言葉が伝えられているが、書業もこの精神が脈々と流れている。

     全約150点。創作活動の全体が分かるような構成となっている。

     「看脚下」=写真[1]▽「忘」=同[2]▽「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」▽「阿吽(あうん)」▽「仄のか」(遺作)などの前衛作品からは表現への強い意欲とシャープな動きが刻印されていて魅了されるに違いない。鑑賞者は多彩でピュアな作品群と向かい合って、知らず知らずのうちに「かたち」や「意味」について自問を始めているだろう。

     一方、文字が前面に出た「句曲外史集より」▽「臨懐素自叙帖」=同[3]▽「寒山詩」なども学書の確かさとひとひねりした創作態度が満ちあふれている。

     前衛書の開拓者たちのキラキラとした精神を受け取り、なお単純な模倣を良しとしなかった世代の作品の再評価が、これほど必要とされている時代はない。類型化が指摘される前衛書の突破口のヒントが隠されていると思われるからだ。

     一方、独立選抜書展(15~21日、東京・上野の東京都美術館)は、書人の創作の狙いとデフォルメの微妙な関係について想像をめぐらせる契機としたい。

     中核書人が、確固とした創作意図を持っているのは理解できる。仲川恭司さん「燃」▽片岡重和さん「太虚」=同[4]▽柿下木冠さん「林」▽澤江抱石さん「怪」などは、確かに書人の強い意思が感じられる。思いを定着させたり、文字造形を揺すったり、書技を駆使して挑んでいる様子が分かる。一方で読みやすさという観点では、なかなか困難な局面を迎えている作品があるようにも感じられた。

     同時開催されている高校生の大作展は、何ともすがすがしい。若い力を真正面からぶつけた大作からは、技術至上主義の落とし穴を明快に訴え掛けてくれる。【桐山正寿】

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