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岩手・宮城内陸地震

日帰り温泉で再起 7人犠牲の旅館

客を迎える前に浴槽を洗うのが菅原昭夫さんの日課だ=宮城県栗原市で2018年6月11日、山田研撮影
土砂でつぶれ7人が行方不明となった「駒の湯温泉」=宮城県栗原市栗駒沼倉で2008年6月14日、本社ヘリから北村隆夫撮影

 東北4県で死者17人、行方不明者6人を出した岩手・宮城内陸地震で、宿泊客や従業員、経営者家族の7人が犠牲になった旅館「駒の湯温泉」(宮城県栗原市栗駒)。主人の菅原昭夫さん(62)は奇跡的に生き残り、時を経て日帰り温泉として復活させた。14日で発生から10年。菅原さんはこの日、「今年が本当の意味でスタート」と決意し、温泉近くに建てた慰霊碑に手を合わせる。

 2008年6月14日午前8時43分ごろ、震度6強の揺れに襲われ、直後に旅館の目の前の山が崩れた。土砂が川を埋め、「雨が降ったら大変だ」と思っていると、上流で残雪を巻き込んだ土石流が発生。旅館を一気にのみ込んだ。菅原さんと父(96)は救出されたが、母(当時80歳)と兄(同58歳)を失った。

 毎年6月14日、温泉近くにある犠牲者7人の名を刻んだ慰霊碑で冥福を祈る菅原さん。旅館で亡くなった男性宿泊客(同35歳)の親から「お互い遺族なのですから」と声をかけられた。一方で亡くなった従業員3人の遺族の中には、雇用主と被雇用者という関係から責任を問う声もあったが、命日かその前日には従業員の墓参りも欠かさない。

 地震で建物は流され、源泉も埋もれる中、「我々はお湯屋さん。これしかできない。ここでやろう」という地元同業者の声に刺激を受け、新たな源泉を見つけた。ただ、湯量が少なく温度も低い。再建は危ぶまれたが、地震から2年後、温度が少しずつ上昇。12年に小屋がけの足湯を作り、15年秋には男女2棟の湯小屋がある日帰り温泉で営業を始めた。

 飲食できる「そばカフェ」も始め、今年は湯小屋とカフェをつなぐ板張りのスペースに屋根付きのテーブル席を設けた。形が固まるまで10年かかった。

 源泉の水温は今も38度強とぬるく、雪解けや大雨の日は下がることもある。気温の低い日には脱衣場などでストーブをたく一方、ぬる湯を「持ち味」と考えてホームページで強調する。被災地であることを知らずに訪れる客も多くなった。

 お湯の良さや雰囲気、提供する手打ちそば……。菅原さんは「被災地を売り物にするのではなく、本当の自力でお客さんを呼べるようにしていきたい」と述べ、前を向いた。【山田研】

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