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余録

今昔物語に藤原常行という貴族が京の御所の美福門の近くで百鬼夜行にあう話がある…

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 今昔物語に藤原常行(ふじわらのときつら)という貴族が京の御所の美福門の近くで百鬼夜行(ひゃっきやこう)にあう話がある。大勢がたいまつを手に東から歩いて来るのに会った常行は神泉苑の門のかげに身を隠す。見ると恐ろしい鬼の集団だったのだ▲常行は気配に気づいた鬼につかまりそうになったが、鬼はなぜか近づけない。常行の衣には高僧が書いた呪文を乳母が縫い込んでいたのだ。現場近くの二条大宮は、百鬼夜行がよく出ることから当時は「あははの辻(つじ)」と呼ばれていた▲その昔は道と道の交差する辻は、この世と異界の交わる場所でもあると思われたようだ。昼に人が集まるように、夜は妖怪や魔物が集まったわけである。世は変わっても、今も情報の交差する闇のサイトには集う鬼たちがいるらしい▲浜松市に住む看護師、内山茉由子(うちやま・まゆこ)さんが連れ去られ、遺体が静岡県藤枝市の山中で見つかった事件である。監禁容疑で逮捕された男2人はネットの掲示板にあった「金もうけしないか」という書き込みによって知り合ったと話している▲つまり2人はお互いの身元も知らず、内山さんとも面識がなかったというのだ。警察はこの事件を計画し、ネットで仲間を募っていた人物が他にいるとみて捜査を続けている。またもまがまがしい悪意を結びつけたネットの闇である▲異界の鬼や妖怪ならばいざ知らず、ネットでの犯罪実行人の募集をどうにかできないものかとは思って当然だろう。誰もが利用できるネットの自由な情報空間をねり歩く百鬼夜行が悔しくも、情けない。

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