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進まぬ原発事故拠点病院整備

東京電力福島第1原発事故を受け、被ばくのスクリーニング検査をする保健所の職員=水戸市で2011年3月17日午後8時19分

 原発事故時に、地域医療で中心的な役割を担う原子力災害拠点病院の整備が遅れている。現場の負担が重く、国が指針で設置を求める24道府県のうち5月末時点で8府県では全く整備されていなかった。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故でかつてない「原子力と自然の複合災害」を経験したが、被ばく医療体制の課題は山積したままだ。

     ●役割明確化狙うが

     「被ばく医療の基礎知識がない医師が多く、現場は混乱していた」。2011年の福島第1原発事故直後に福島県内の病院で治療に当たった男性医師は、当時をそう振り返る。

     事故で広範囲に放射性物質が飛散し、多くの住民が避難を余儀なくされた。福島県内の医療機関では「体に放射性物質が付着し、被ばく線量の測定が必要な人だけでなく、けが人など多様な患者を受け入れた」(男性医師)が、避難で持病を悪化させ、死亡する高齢者らも相次いだ。

     以前の被ばく医療体制は、大量の被ばくで作業員2人が死亡したJCO臨界事故(1999年)のような事態を想定、被ばく治療そのものが重視された。しかし福島の原発事故を教訓に、重度の被ばく者らに対応する医療機関と、地域のけが人や患者、軽度の被ばく者を受け入れる医療機関をそれぞれ指定し、役割を明確化することになった。

     このため国は15年8月、原子力災害対策指針を改定。重度被ばく医療は、国指定の「高度被ばく医療支援センター」である放射線医学総合研究所(放医研、千葉市)や、広島大を含む四つの大学病院の担当となった。また地域の患者らへの対応は、原子力関連施設から30キロ圏内の24道府県で指定される「原子力災害拠点病院」が担うと決まった。自然災害に対応する「災害拠点病院」の原子力版だ。

     ●指定メリットなく

     ところが全国で原発の再稼働が続く一方、原子力災害拠点病院の指定はさまざまな理由で思うように進まない。

     瀬戸内海に浮かぶ山口県の離島・八島(やしま)(上関町)には6月1日現在、26人が暮らし、県内で唯一、四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)の30キロ圏内に位置する。このため山口県は拠点病院の指定を求められ、地元の大学病院と協議中だが、めどは立っていない。県の担当者は「たとえ影響人数が少なくとも体制は整えないといけない。何とか指定をしたいが……」と話す。

     経営上のメリットがないことも要因とされる。自然災害の災害拠点病院では、被災時の復旧マニュアルを策定したり、防災訓練を実施したりすることで診療報酬が加算されるが、原子力災害拠点病院では加算が認められていない。

     それにもかかわらず拠点病院に指定されると、国の補助はあるものの被ばく量を測定する機器の整備や専門知識を持つ医師らの育成、医師会などへの定期的な講習も課される。

     拠点病院がまだ指定されていない岡山県の担当者は「病院に指定のメリットがなく、断られることがある。地方では経営難の病院も多く二の足を踏んでいる」と説明。永田高志・九州大助教(救急災害医療)は「自然災害の拠点病院と同様に診療報酬の加算が認められるべきだ」と指摘する。

     現場の負担が重いとの声を受け、規制委は6日、指針の改正案を了承。病院ごとに実施していた研修制度を、共通テキスト作製などで放医研を中心とした全国一律の運用に改め、負担を軽くする。規制委事務局の原子力規制庁は診療報酬の加算ができないか今後、厚生労働省に検討を働きかける方針だ。

     規制委の更田豊志委員長は記者会見で「(今後は)指定が加速されることを期待する」と話した。【鈴木理之】

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