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華恵の本と私の物語

/23 ぼくたちのリアル

 --はなしたい。ゼミがわったら、駅前えきまえのカフェにて。ひとりで。--

     ヒロくんからのショートメッセージ、何回読なんかいよかえしてもやっぱりおかしい。このかんじからすると……。

     多分たぶん告白こくはくされる。

     スマートフォンをカバンにほうれ、おもってカフェのとびらけた。

     ヒロくんはおくのテーブルせきっていた。わたしはかいにすわり、ちらりとヒロくんのかおた。くびほおあかい。色白いろじろかれは、緊張きんちょうれがかおやすい。はやく、なにかってよ。

     アイスコーヒーがとどき、わたしがひと口飲くちのむと、

     「今日きょうは、ぼくの気持きもちをいてほしいんだ」

     きた。わたしはうつむいて、ゆっくりうなずく。

     「きなひとができた」

     もうげられない。しっかりめてちゃんとことわるんだ。

     「そのひとは」

     きなひとは、きみなんだ。そのことばが、くる。

     「おんなじゃないんだ」

     はい?

     「つまりその、ぼくっ、おとこきになったみたいなんだ!」

     「……へぇ、それで?」

     自分じぶん勘違かんちがいを、なんとかごまかした。するとヒロくんの表情ひょうじょうはふわっとあかるくなり「ハナエならやっぱり、かないっておもったよ。あのね」とはなはじめた。そうかそうか、とうわそらあいづちをった。ヒロくんは、秘密ひみつはなしてらくになったようだった。

     それから大人おとなになったいまでも、ときどきヒロくんとっている。あのとき、よくもわたしに勘違かんちがいさせたね!とうと、かれはいつもおなかをかかえてわらう。

     ヒロくんはこれまで何人なんにんかの男性だんせいきになったけど、一度いちど告白こくはくしていない。

     「簡単かんたんにはえないんだよ、ハナエにはなすときでさえ、緊張きんちょうしたんだよ、ましてやきな相手あいておもいをつたえるなんて」

     相変あいかわらずわたしは、そっか、とあいづちをつことしかできない。告白こくはくって、そんなにむずかしいものなのかな。最近さいきんすこしもどかしくなってきた。かれおとこきになりはじめてから、もう6ねんもたった。

      + + + + 

     『ぼくたちのリアル』の主人公しゅじんこうわたるは、小学校しょうがっこう同級生どうきゅうせいが、同性どうせいきになったことをります。わたるかれ背中せなかしますが、その最後さいごまで、相手あいて自分じぶん気持きもちをはっきりとはつたえません。いまならえるのではないかという場面ばめんもありますが、かれはそのときの相手あいて気持きもちを大切たいせつにしたくて、自分じぶんおもいをそっとむねにしまうのです。

     きだからこそ、自分じぶんおもいをつたえない。それはかなしいけど、すごくあたたかいものです。

     もちろん我慢がまんばかりするのは、つらいし、正解せいかいとはおもわないけど……。

     つくづく、「いいから告白こくはくしなよ」なんて、簡単かんたんにはひとえないものですね。


    『ぼくたちのリアル』

    戸森ともりしるこ・ちょ 佐藤真紀子さとうまきこ

    講談社こうだんしゃ 1404えん


     エッセイストの華恵はなえさんが、ほんにまつわるおもきなほん紹介しょうかいします

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