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社説

米国が対中制裁関税発動へ 貿易戦争に勝者はいない

 超大国の一方的な制裁は、世界的な混乱を招くだけである。

     トランプ米政権が中国に対し制裁関税を来月から発動すると発表した。米国企業の先端技術など知的財産権を侵害されたという理由だ。

     中国製鉄鋼への高関税に続く強硬な保護主義政策である。対象は5兆円超と鉄鋼をはるかに上回る。

     中国も同じ規模の関税で報復すると決め、米中両大国の「貿易戦争」に突入する恐れが高まった。

     誰の利益にもならないものだ。

     米中の輸入品価格が上昇し消費者や企業の負担が増す。両国の景気が停滞すれば世界経済に波及する。

     米国は鉄鋼への高関税を日本や欧州にも発動した。対中制裁で世界的な摩擦がさらに深刻化しかねない。

     確かに中国による知的財産権の侵害は日欧も批判するなど長年の懸案だ。ただ、もっと問題なのはトランプ政権の独善的な対応である。

     制裁の根拠とした米通商法301条は、世界貿易機関(WTO)のルールに違反する疑いがある。そうした強引なやり方で狙ったのは、制裁をてこに譲歩を引き出すことだ。

     まず対中貿易赤字の削減だ。米中は制裁回避を探る協議も行い、中国が輸入拡大策を示して歩み寄る場面もあったが、溝は埋まらなかった。

     もう一つはハイテク分野だ。貿易赤字より根深い対立があった。

     米国が問題視したのは、先端産業の強化を図る中国の国家戦略「中国製造2025」である。米国から奪った技術が使われ、米国の覇権が脅かされると懸念している。

     米国は中国政府による巨額の補助金の停止を求めたが、中国は拒んだ。制裁対象はハイテク製品も多い。

     だが貿易をゆがめるような補助金ならば、WTOなどで是正を求めるべきだ。力ずくで迫る手法は国際ルールをないがしろにするものだ。

     安全保障にも影響しかねない。

     トランプ大統領が制裁を決断したのは、米朝首脳会談によって、北朝鮮の後ろ盾である中国の力を借りる必要性が低下したためという。

     しかし北朝鮮の非核化に向けた手順は何も示されていない。中国との協力はより重要性を増すはずだ。

     米中は世界経済の安定と安全保障の維持に責任がある。貿易戦争の回避に力を尽くすべきだ。

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