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加計学園理事長が初会見 軽すぎる「作り話」の始末

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 加計学園の加計孝太郎理事長が問題の発覚後、初めて記者会見した。

 学園は2015年2月に安倍晋三首相と加計氏が面会したと愛媛県や同県今治市に報告していたが、加計氏はそれが虚偽だったとして、担当職員を処分したことを発表した。

 加計氏は県と市の関係者に「多大なるご心配とご迷惑をおかけした」と陳謝した。学園代表者として自身の監督責任を認め、給与の一部を自主返納するという。

 しかし、学園からの面会報告は県職員が文書に記録していたものだ。それを起点として当時の柳瀬唯夫首相秘書官が学園と県、市の担当者に会い、獣医学部新設へ向けた国家戦略特区の手続きが進んでいった。この展開には合理性がある。

 面会が虚偽であったなら、認可を得るために地元自治体をだましたことになる悪質な行為だ。

 それなのに、県が文書を国会に提出してからの1カ月間、ファクス1枚を報道各社に送っただけで、理事長自ら説明しようともしなかった。

 加計氏の会見について愛媛県の中村時広知事が「もっと早くできなかったのか」と批判したのは当然だ。

 県と市は学園に計約93億円を支出することを決めている。その手続きの正当性も揺らぎかねない。納得のいかない住民も少なくないだろう。

 しかも、加計氏は面会を虚偽だとする明確な根拠を示さず、「記憶にも記録にもない」と説明しただけだ。そのうえ、軽い内部処分とおわびで済ませようというのは、ことの重大さをわきまえていない。

 首相は架空の面会話で名前を悪用されたことになる。それをとがめもしないのは「17年1月まで知らなかった」という自身の国会答弁に照らして好都合だからではないか。

 仮に面会が事実であれば、特区事業の決定権者である首相のお墨付きによって、まさに最初から「加計ありき」だった疑いが濃くなる。

 そうした首相の姿勢が学園側の対応の軽さを助長しているようにみえてならない。加計氏がまともな説明をしないのであれば、国会が真相解明に取り組むべきだ。

 野党の要求する証人喚問について加計氏は「私が決めることではない。お待ちしております」と述べた。与党が喚問を拒む理由はない。

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