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余録

時代劇の定番シーンである…

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 時代劇の定番シーンである。ばくちに狂って負けの込んだ男が、やがて持ち金を失ってしまう。すると賭場の貸元(かしもと)の目配せを受けた代貸しがその客に耳打ちする。「旦那(だんな)、コマならいくらでもお回ししますよ」▲まあ、その先の成り行きは時代劇ファンならずとも目に浮かぶ。その昔、賭場の親分を貸元と呼んだのは、名の通り客に賭け金を貸したからである。代貸しはその代理、賭博の開帳はタネ金の貸し付けとセットになっていたのである▲まあ賭場を開く人の考えることは古今変わらぬようで、現代のカジノ業者も客への賭け金の貸し付けをする。先日衆院を通過したいわゆるカジノ法案にもその項目があり、貸元ではなく「特定金融業務」なる立派な名前がついている▲貸し付け対象となる客は国外居住の外国人か、一定額の金銭をカジノ業者に預託した人。貸付金は2カ月間は無利子で、返済できなければ年14・6%の違約金を上乗せして請求される。預託金の額はカジノ管理委の規則で決めるという▲ギャンブル依存症に詳しい人によれば、「負けは勝って取り戻す」との楽観に取りつかれた依存症の人々である。そこに2カ月間返済を待つ無利子のタネ金を回しますぜとの誘いがあればどうなるか。ハッピーエンドは期待しにくい▲参院の審議が始まるカジノ法案だが、市民社会の健全にかかわる制度のすみずみまで必要な検討がなされてきたのだろうか。貸元ばかりが大手を振り、水戸黄門も遠山の金さんもいない時代劇はごめんだ。

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