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ロシアW杯

人種、性別に独自価値観 難しい差別の断罪

14日のW杯開幕セレモニーで物議を醸した英国人歌手ロビー・ウィリアムズさん=AP

 W杯の開催に絡んで、ロシア国内での人種や性の差別に関連した言動が取りざたされている。国際サッカー連盟(FIFA)が差別撲滅を掲げていることもあり、関心が高まっている形だ。

 W杯開幕を控えた今月中旬、ロシアの女性議員が自国女性に対し、大会期間中に白人以外の外国人と性的関係を持つべきではないと発言した。ソ連時代のモスクワ五輪(1980年)の際、ソ連の女性たちが外国人男性と関係を持ち、未婚のまま出産する事例があり、特に両親の人種が違う子どもたちが差別にあってきたとされる。このような経緯を踏まえ、タマラ・プレトネワ下院議員が自国の女性に「自制」を説いたのだ。

 14日のW杯開幕セレモニーでは、出演した英国人歌手ロビー・ウィリアムズさんの行動が物議を醸している。歌の最後で「これは自由のためにやるのだ」と即興の歌詞を歌い、カメラに中指を突き立てる下品で挑発的なポーズを取ってみせたためだ。

 元々ウィリアムズさんが出演することに対し、欧米では批判が強かった。ロシアでは2013年から同性愛を宣伝する行動を禁じる法律が施行され、ロシアで開かれた14年のソチ五輪ではこれを批判して欧米各国の首脳らが五輪開会式への参加を見送った。このため、今回のウィリアムズさんの出演自体が露政府に加担する行為とみなされたのだ。そんな中でのウィリアムズさんの行動は幾つかの臆測を呼んだ。同性愛を差別するプーチン政権への批判? それとも彼の出演を批判してきた声への反論?

 ソ連時代から多民族に慣れているロシアだが、黒人はほとんどおらず、サッカーの試合で黒人選手を差別する行為などは今もなくなっていない。一般的に保守的な価値観が強く、社会では性的少数者(LGBTなど)の権利が尊重されているとは言い難い。

 ただし、これらの問題が難しいのは、ロシアとしては独自の価値観を抱き、人種や性別の問題に対処してきたという意識を持っていることだ。そのため欧米からこれらの問題について一方的に批判されると、反発してかたくなになってしまう側面も強いのだ。

 人種差別への配慮を欠いたとして問題となった女性議員の発言について、ペスコフ露大統領報道官は「ロシアの女性は賢いのだ」と語るのみで、まともに取り合っていない。W杯開幕戦の夜、モスクワの路上では、中南米から来た複数の男性が音楽に合わせて、ロシア人と思われる女性たちと楽しそうに踊る、自然体の交流の姿があった。【大前仁】

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