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原発の使用済み核燃料を全量再処理し、取り出したプルトニウムを高速増殖炉で再び使う。事実上破綻している日本の「核燃料サイクル」政策にさらなるほころびが生じた。
廃炉が決まった高速増殖原型炉「もんじゅ」の後継として日本が協力を表明しているフランスの高速実証炉「アストリッド」計画の大幅な縮小方針だ。
出力は当初予定の3分の1以下で「もんじゅ」より小さい。これで実証炉としての役割を果たせるのか。疑問の声が上がるのは当然だ。
しかも、アストリッドを建設するか否かを決めるのは2024年。次の実用炉を造るかどうかの決定は60年ごろ。ゴーサインが出たとしても実際に造るのは80年ごろという。
ここから浮かぶのは高速炉先進国のフランスでさえ実用化を念頭においていないということだ。アストリッド縮小の背景としても「実用炉には緊急性がない」と認めている。
かつて核燃料サイクルが構想されたのは、ウランが不足し燃料のリサイクルに経済性が生まれると考えられたからだ。しかしウランは十分にあり、一方で、高速炉の実現は難しく、経済的にも見合わないことが明らかになった。米英独など主要国が撤退したのはそのためだ。
原発の先行きが不透明で、財政状況も厳しい日本が、アストリッド計画に費用負担して参加する意味があるとは思えない。参加はやめ、サイクル政策そのものからの撤退へかじを切る好機とした方がいい。
サイクルには別の側面もある。再処理によって生み出されるプルトニウムが核兵器に転用できることだ。
このため日本政府は「利用目的のないプルトニウムは持たない」を原則としてきたが、すでに英仏に37トン、国内に10トン、計47トンものプルトニウムを保有する。青森県の再処理工場が稼働すれば、さらに増える。
本命の高速増殖炉が頓挫した今、プルトニウムを消費できる頼みの綱は普通の原発で燃やす「プルサーマル」だが、これも進むめどはない。
政府の原子力委員会はプルトニウム削減の指針をまとめるというが、サイクル政策を変えずに小手先で対応するのは限界だ。核拡散を懸念する米国や近隣諸国からの批判が強まる前に、路線変更が必要だ。