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社説

大槌町旧庁舎の存廃 遺恨残さぬ方法はないか

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 震災遺構とどう向き合うべきか。東日本大震災で津波に襲われた岩手県大槌(おおつち)町の旧役場庁舎の解体を巡り、議論が起こっている。

     海岸近くにある2階建ての旧庁舎は、2階天井まで浸水して全壊。庁舎にいた当時の町長と職員28人が犠牲になった。

     「見るのがつらい」「庁舎があるから一目で被害が分かる」と町民の意見は分かれたが、2013年に一部を保存する計画が決まった。それが覆ったのは、15年に解体を公約に掲げた現町長が当選したためだ。

     今年3月には町議会で解体のための補正予算が認められ、今月18日、旧庁舎に重機を入れて内部の解体撤去工事が始まった。

     工事に必要な法定の届けを事前に県に出していなかったことなどから、作業はいったん止まっている。「保存に向けた熟慮」を求める住民側が工事の差し止めを求める仮処分を申し立てるなど、平行線のままだ。

     津波の被害を受けた太平洋沿岸の自治体では、多くの建物や構造物が撤去・解体された。遺族や被災者への配慮というのも理由の一つだ。

     一方で、保存を模索する動きもある。津波のすさまじさを物語る遺構は、鎮魂の場所としてだけではなく、防災教育の場として教訓を後世に伝える社会的価値もある。

     復興庁は13年に震災遺構の保存を支援する方針を示した。復興交付金の第1号となったのが、岩手県宮古市の「たろう観光ホテル」だ。

     今回、大槌町で事態がこじれているのは、検証も不十分で、議論も尽くされていないと感じている住民がいるからだろう。

     例えば、宮城県南三陸町で町職員らが犠牲になった防災対策庁舎は解体か保存かの結論を保留した。31年までに決めるとしている。

     震災ではないが、核兵器がもたらす悲劇を伝える広島市の原爆ドームも、存廃論議の末、約20年後の1966年に保存が決まった。

     一度壊したら、二度と元には戻らない。解体か保存かの二元論ではなく、移築した上で保存を考えるのも一つの手だろう。

     いずれにせよ、町民みんなが納得できるような形で解決するのが、一番望ましい。遺恨を残さないよう、再考する時間はないのだろうか。

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