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みなかみ町長セクハラ

事実無根の中傷「精神的に追いつめられて…」被害女性、胸中語る

当時の状況を説明している被害者の女性=群馬県内で2018年6月21日、鈴木敦子撮影

 「今でも恐怖心が消えず、日常生活を送れなくなっている」--。群馬県みなかみ町の前田善成町長(50)から無理やりキスなどのセクハラ行為をされたとして、強制わいせつ容疑で被害届を出した女性が初めて毎日新聞の取材に応じ、町長によるブログなどでの一方的な主張や、自身や家族に対する中傷などの2次被害に苦しんでいる胸中を打ち明けた。【鈴木敦子】

事実無根の中傷 「事件前に戻れるなら戻りたい」

 --今のお気持ちを教えてください。

 ◆事件からずっと、つらく苦しい日々が続いています。何度も「記憶を消したい」「事件前に戻れるなら戻りたい」と思って、職場の人にもそう言ってきました。事件そのものへの嫌な気持ちは当然ありますが、それ以上に2次被害が次から次へと出てきて、どんどん精神的に追い詰められて……。怖くて眠れなかったり、ちょっとした物音におびえたり。今でも町内を1人で出歩くことや、買い物に行くことに恐怖を感じています。

 性犯罪の被害者が声を上げられないというのは、こういうことなんだと実感しました。こんなことなら声を上げなければ良かった、泣き寝入りした方がいいのかとも思いました。でも、周りの人から「あなたは何も悪いことをしていないんだよ。悪いのは加害者だからね」と励ましてもらい、何とか頑張っています。

 --具体的にはどういう2次被害がありましたか?

 ◆いろいろあります。一つは、情報が町長の都合のいいように広まってしまったことです。

 もともと私はこんなに大ごとにしたくなかったんです。町長には、やったことを認めて謝罪して、もう二度と女性に対するセクハラはしないと反省してもらいたかっただけです。本当は性犯罪の被害なんて恥ずかしくて誰にも言いたくない。小さな町ですから知れ渡るのなんて早いし……。事件が表ざたになって、大好きなこの仕事を続けられなくなるのはすごく嫌でした。

 でも、あの日あまりにもショックで、我慢できずに上司や同僚に打ち明けて、団体から私の気持ちを町に伝えてもらいました。「まだ謝罪を受け入れられる段階ではない」とも。ある時、いきなり「町長の知人」という方が私の家族に接触してきました。でも、私は家族を心配させたくなくて被害を打ち明けていませんでした。むしろ、できることなら家族には知られたくないことです。突然のことで、家族にまで怖い思い、嫌な思いをさせて本当につらかったです。この先も家族に危害が及ばないか不安です。

 --中傷やうわさも飛び交っていますね。

 ◆どれもうそばかりです。例えば私を「○○の女だ」とか「被害者と示談することになった」など事実無根のことが流されているようで、本当にひどい嫌がらせです。

 その後、町長からブログや記者会見で一方的に事実と異なる主張をされ、許せない気持ちがどんどん強くなっています。町長は自分の身を守ることしか考えていないんだな、と思いました。

 町長の支持者が町長の言葉を信用して拡散していることにも傷ついています。正直ここまでの2次被害になるとは思っていませんでした。私がどれだけ泣いて、悩んで、眠れなくて苦しんで、夢でもうなされているのかもわからずに……。傷つきすぎて感覚がまひしそうです。

町長の主張と隔たり 「納得いくまで頑張る」

 --被害者と町長の主張に隔たりがあります。例えば当日の状況。町長は「女性から誘われた」と主張しています。

 ◆私は町長と仕事以外で接したことはありません。団体の職員としてあいさつしたり、返事したりする程度です。

 事件があった日も、相手は町長という立場ですから、失礼がないように会話に気を使いましたし、笑顔でお酌もしました。社交辞令で「(団体の2次会に)来ていただいてありがとうございます」とは言いました。上司や同僚もいる席です。その場にいたみんなが町長に対しておもてなしをしていました。私も、あくまで仕事上の気遣いで、一般的な社会人として振る舞っただけです。私から誘ったなんて全然違います。「勘違いされるようなことをしたんじゃないか」などと言われるのも納得いきません。

 それに、私が団体のために体を張って何かをするなんて、常識的に考えてありえませんよね。何のメリットがあるのでしょう。一部でハニートラップだとか、そういうふうに仕立て上げようとしているのが本当に許せないです。

 --町長は、行為自体は認めながらも「犯罪的、セクハラ的なものはしていない」と主張しています。

 ◆何を言っているのか全然理解できません。私は触られたくないと思っていました。「立場のある人だから、これ以上はしてこないよね」と信じたい気持ちもありました。町長の機嫌を損ねてはいけない、場を乱すわけにはいかないとも考え、「多少は我慢しないといけないのかな」とも思いました。

 --セクハラ行為があった翌日、町長からSNSで「昨日はありがとうございました」という連絡があったようですね。

 ◆私は前日のショックを引きずっていて、絶対に「なかったことにはされたくない」という気持ちがありました。それで「昨晩のこと覚えていますか?」と返事しました。町長からは「覚えています。すみませんでした」と。「覚えていない」で済まされたら、それまでだと思っていたので、まずは事実確認をしておこうと思いました。

 --町長はそのSNSのやりとりを断片的にブログで紹介し、「彼女が気分を害していないことがわかって少しホッとした」と書いていますが。

 ◆全く事実と違います。私ははっきり自分の気持ちを伝えました。「町長のことはすごく尊敬していましたし、信頼していたので、正直、無理やりのキスはとてもショックでした」と。本当は「私が町長より立場が下ということを利用されてしまったのかな」とか、いろいろな感情がありましたが、配慮した言い方にとどめました。

 --町長は今回の件を「プライベートのこと」と強調しています。

 ◆プライベートなら何でも許されるのでしょうか。「そこまでのことはしていないだろう」「大したことない」という認識も強いのかもしれません。でも、セクハラがあれだけニュースで騒がれているさなかです。政治的な面を切り取って、私の訴えを「町長を辞めさせたいがために」みたいな批判をする人もいますが、そんな意図はありません。ただ、町長という立場で許される行為でしょうか。

 --セクハラを許さない社会を作ることが大切ですね。

 ◆それが大事だと思います。私は今、支えてくれる多くの友人、家族、職場の同僚、上司のおかげで戦えています。セクハラに毅然(きぜん)と対応することが大事だと考える人たちの存在に救われました。2次被害に押しつぶされそうな毎日ですが、「この問題をうやむやにしてはいけない」と一緒に戦ってくれる人たちに感謝しながら、納得のいく形になるまで頑張りたいと思っています。

■みなかみ町長を巡るセクハラ問題の経緯■

 4月18日夜、町内の飲食店で開かれていた団体の送別会の2次会に、前田善成町長が飛び入りで参加し、団体の女性職員に抱き付き、キスをしたとされる。女性から相談を受けた団体の幹部が4月下旬に町役場を訪れて被害を伝え、5月2日、女性が警察に届け出た。

 町長は5月7日に自身のブログで「無理やり何かをしたことは断じてない」と主張。8日に女性側の代理人弁護士が「事実と異なる一方的な主張がされたことに大変傷ついている」と反論する文書を発表したが、町長は10日に再びブログで「女性から好意があったと思い込んだ」という趣旨の書き込みをした。

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