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武田 砂鉄・評『国道16号線スタディーズ』塚田修一、西田善行/編著

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町としての成長がなく「空漠感」を抱えている

◆『国道16号線スタディーズ』塚田修一、西田善行/編著(青弓社/税別2000円)

 神奈川県横須賀市から千葉県富津市までの1都3県、都心から約30キロの距離を環状に走る国道16号線。そこから見える光景、根ざす歴史、萎(しぼ)んで消えていく風土を考察する一冊。

 映画監督・富田克也が「『物語の発生する余地がない』場所」とした16号線の「空漠感」。東京・多摩地区で生まれ育った自分にも皮膚感覚として残る。電車で横に移動すれば1時間足らずで都心に辿(たど)りつけるが、そことの同質性は少ない。車で縦に走ればたちまち同質性に気付くが、そことの親和性を認めたくない感覚。電車は都心から枝葉のように伸びるが、枝葉同士を結ぶのが幹線道路。16号線だ。

 『闇金ウシジマくん』の舞台となったのが相模原。その場を象徴する風景として、送電線と巨大な送電鉄塔が反復的に登場する。その送電の外輪系統は、都市を囲む16号線の環状を彷彿(ほうふつ)とさせる。16号線の多くでは大型車が通行可能であり、トラックドライバーは大きな駐車場のあるコンビニを頭に入れつつ、「高速がないエアースポット」を走る。彼らは、休日に突如増えるファミリーカーの「トロトロ」「タラタラ」運転…

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