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詩の橋を渡って

「詩の礫」で知られる福島市在住の詩人、和合亮一さんの連載です。

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詩の橋を渡って

生の隣に目を凝らす=和合亮一(詩人)

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6月

 つまがさめざめ泣いている

 うすばかげろうみたいに澄んで

 さめざめ泣いているのです

 なぐさめようとするのだけれど

 どんなことばもみつからなくて

 「ゆうぐれどきは かえりたくなる/だれかがぼくを まつあそこへと/そこがどこだか しりはしないが」。じめじめした梅雨の合間の夕暮れの空に、ふと幼い頃が懐かしくなったり、愁いに満たされたりする。言葉にできない寂しさを覚える。池井昌樹の新詩集『未知』(思潮社)をめくる。「みずにうつった そらをわたって/あのひのように ゆめみるように/それがいつだか そこはどこだか/だれがまつのか ゆうぐれどきは」

 気ぜわしい日常の中で時に言葉は、意味を切り取ったり、簡単にまとめあげようとしたり、粗っぽく振る舞おうとしたりする。詩人は柔らかな語り口で敏感に細やかに、心の中を鏡のように映し出そうとしている。平易な詩の響きが優しい息遣いを丁寧に投げかけてくる。筆先に芽生えるようにして、深いところから詩が湧き出ている感じがある。

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