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余録

灯籠の火を火縄で家に持ち帰る「おけら詣り」で知られる…

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 灯籠(とうろう)の火を火縄で家に持ち帰る「おけら詣(まい)り」で知られる京都・八坂神社の年越しだが、昔は参詣人がお互いに悪態を叫び合う行事があった。明かりが消えた暗闇で、人々が好き勝手に他人をののしったそうだ▲井原西鶴(いはらさいかく)の「世間胸算用(せけんむねさんよう)」によれば、参詣者の顔が分からぬほど暗くなると二手に分かれて悪口を言い合ったという。相手をだまらせた口達者の若者が思わぬ突っ込みに一転して引き下がる場面があるから、一種の勝負だったようだ▲ただこの闇の中の悪態、相手が分かっても恨んだりはしないのが祭りのおきてだった(山本幸司(やまもと・こうじ)著「<悪口>という文化」)。さてこちらは一年中、のべつまくなしに匿名の悪罵や中傷が飛び交う今日のネット掲示板やブログである▲そんな悪罵の投稿者を批判して運営元に通報したネットセキュリティー会社員が刺殺されるという事件が波紋を広げている。逮捕されたのは「低能」という悪態を連発して、他の掲示板利用者に「低能先生」と呼ばれていた男だった▲容疑者が事件後に「ネット弁慶卒業」と記したのは、かねて掲示板で「ネット弁慶」--ネット上だけでいばっている人物とやゆされていたかららしい。誰のものともしれない悪態が容疑者の胸に本物の害意をはぐくんでしまったのか▲被害者はネット言論の批評で知られるブロガーで、講演会場で容疑者に待ち伏せされてしまった。闇を飛び交う悪態が、人それぞれの心に潜むわだかまりを激しい攻撃衝動に変えかねないネット社会である。

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