メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

号外熊谷、国内観測史上最高の41・1度
旧優生保護法

強制不妊中絶提訴 子の供養続けた37年 夫婦、涙の訴え

 「2人で子どもを育てたかった」--。28日、旧優生保護法下で人工妊娠中絶と不妊手術を強制された北海道の女性(75)と夫(81)が国家賠償請求訴訟を札幌地裁に起こした。2人が公表した手記には、命を宿した時の喜び、中絶を迫られた悲しみ、手術から現在までの37年間口にすることさえできなかった苦しみがつづられていた。一方、熊本地裁に提訴した渡辺数美さん(73)は実名を明かして国と闘う決意を語った。【日下部元美、清水晃平】

     「手術された当事者と同様にその家族も被害者だ」。北海道の夫婦の弁護団が提訴後に札幌市内で開いた記者会見で強調した。

     弁護団によると、2人は堕胎され亡くなった子どもの位牌(いはい)を肌身離さず大切にし、命日の6月12日に供養を続けてきた。「あまりに苦しい思い出」のため、互いに口にすることができなかった。

     そして37年近くが過ぎた。旧法で不妊手術を強いられた障害者らが声を上げ始めたことを新聞報道で知った。初めて思いを口にし、裁判に訴えようと2人で決意して弁護団と連絡を取った。

     しかし、弁護士との面会で最初はにこやかだった妻は、手術の話になると、嗚咽(おえつ)をもらした。「夫と一緒に子どもを育てたかった」と妻は声を絞り出した。

     夫婦は当初、5月の全国一斉提訴に参加する予定で、訴因は不妊手術のみだった。しかし、初めての子を失った悲しみと怒りから、中絶も理由に加えようと決めた。準備期間が必要となり、今回の提訴となった。

    熊本男性は実名 「被害者に光を」

     渡辺さんはこれまで「親族などに迷惑がかかる」と「木下四郎」の活動名で被害を訴えてきた。しかし28日朝、自宅を出る際に実名と顔を公表することを決めた。「声を上げられない被害者に光が差すように、真っ正直に国と闘っていきたい」。決意の表れだった。

     訴状などによると、渡辺さんは幼いころから「変形性関節症」による障害で運動ができなかった。10歳ぐらいの時、血尿が出たため母親に連れて行かれたかかりつけの病院で何も知らされず睾丸(こうがん)を摘出された。15歳ぐらいの時に自分だけ声変わりしないことを疑問に思って母親に尋ねたところ「優生手術を受けた」と明かされた。

     「人生、終わった」。母親に何度も暴言を吐いた。成人後は結婚を考えた女性もいたが自ら身を引いた。首をつろうと縄を手に山へ向かったり、飛び込もうと水路に行ったり、2度自殺しようとしたが死ねなかった。

     睾丸を取ったことによるホルモンバランスの不調で30代から骨粗しょう症に苦しむ。骨の強度は健常な人の7割程度。関節の骨が削れてしまうため股関節などに人工関節を入れる手術を何度も受けなければならなかった。義手義足メーカーに長く勤めたが重い物を持つのに苦労した。

     「人並みの人生を送らせてやれなくて、すまなかったね」。手術を受けさせたことを悔やみ、謝り続けた母が約20年前、亡くなる間際に言い残した言葉が今も胸を締めつける。


    北海道の夫婦手記

     28日に札幌地裁に提訴した、北海道の女性と夫が手記を公表した。女性は「子どもを夫と育てたかった」と癒やされることのない悲しみをつづった。手記の要旨は次の通り。(原文を尊重しています)

     ◆女性

     夫と結婚して妊娠がわかったとき、うれしい気持ちでした。毎日、2人で一緒に子どもを楽しみにしていました。

     ある日、親戚に「あなたには子どもは育てられない」と言われ、夫が働きに行っている間にむりやり病院に連れていかれました。説明もなく、手術のきずあとはその後もずっと痛みました。男でも女でも産みたかった。私を大事にしてくれる夫との子どもを2人で一緒に育てたかったです。子どもをおろされ、子どもを産めなくなりました。今でも悲しい、悔しいです。

     ◆女性の夫

     私の妻が堕胎させられ、強制不妊手術を受けたのは昭和56年(1981年)6月12日でした。結婚して初めてできた子で、私は40歳を過ぎていたから諦めかけたころに天から授かった子です。私と妻は手を取り合って喜びました。

     妻の手術が行われた日、白木の位牌(いはい)を買ってきました。37年過ぎた今でも毎日を妻にわびる心情で過ごし、後悔しています。

     妻と私は手術を受けてから手術のことを話せませんでした。新聞で取り上げられ、やっと妻を救ってもらえると思いました。この法律がなければ、私たちの子が奪われることも、妻に子どもが望めなくなることもありませんでした。この悪法でどれだけの国民の命が奪われたのでしょうか。

     わが子を奪われた私たちの悔しさ、悲しさを裁判で問いたいのです。同じ立場に立たされている人たちには勇気を持って立ち上がってほしい、一緒に闘ってほしいと思います。

    関連記事

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 天気 埼玉・熊谷で41.1度 国内観測史上最高
    2. 文科省汚職 「裏口入学ある」伝達 東京医大前理事長
    3. LGBT 「生産性なし」自民・杉田議員の寄稿が炎上
    4. あおり運転殺人 22歳砕かれた一歩「大好きなバイクで」
    5. 天気 大暑 東京・青梅で40.3度 各地で39度超え

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]