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eスポーツ

プロゲーマー・けんつめし ゲームの才能で未来切り開きたい

試合に勝利し安堵の表情を浮かべるけんつめし選手=ソウルで2018年6月2日、平野啓輔撮影

 対戦型のコンピューターゲームで腕前を競う「eスポーツ」。今年は元年と呼ばれ、プロライセンスの発行や、8月に開催されるジャカルタ・アジア大会で公開競技に採用されるなどの活発な動きを見せている。一方、プロゲーマーがどんな存在なのかはまだあまり知られていない。その実像に迫るべく、モバイルゲーム「クラッシュ・ロワイヤル」(クラロワ)のプロゲーマー“けんつめし”こと太田研人さん(19)に話を聞いた。【平野啓輔、兵頭和行】

全ての時間をゲームに使いたい

 --プロゲーマーになる前は?

 クラロワを始めた2年前はまだ高校生で、ゲームが少しうまいやつという存在でした。進学校だったので漠然と国公立大を志望していたのですが、将来のビジョンがなくて、進路に悩んでいた。何となく大学に進学しても、4年間ただ無難に生きているだけになると思ってしまった。結局、料理が好きだったので調理の専門学校に進んだのですが、2017年6月に行われたアジアカップで3位に入ったことで、ゲームの道に進みたいという思いが強くなりました。

 --ご両親は心配されたのでは?

 はい。親はまず大学に行かないことに反対で、専門学校に行くことを説得した後に心変わりをしたので、相当反対されました。しかも、ゲームは不安定すぎるので、少なくとも資格を取ってからやってくれと。ただ、僕には自分に注目が集まっている今こそ飛び出したいという思いがあり、「ゲームのためにもっと時間を使いたいから、学校をやめて東京に行く」と告げました。さすがに親も怒って「今まで出した学費はどうするのか」と言われたので、「全て賞金から払う」と伝えたら、「もう好きにやれ」と。親は今では応援してくれていて、僕が負けた時にはLINEで「調子が悪いのは誰にでもあるから切り替えて頑張れ」と励ましてくれたりもします。気にかけて見てくれているので、ありがたいです。筋を通す意味でも、学費は全て返済しました。

 --プロゲーマーへの思いは?

 もともとゲームで競うのが好きで、ランキングを更新したり、ネットでコミュニケーションをとったり、ユーチューブに動画をアップしてコメントがあったりするのが楽しかった。また、もっと時間をかければ強くなれる、自分がどこまでいけるかを試してみたい、そのためには全ての時間を使いたいという思いで踏み切りました。もし失敗しても、また専門学校に入り直せばいいやと。

 --プロゲーマーになって変わったことは?

 プロなので結果を残すために努力を怠らないのは当たり前です。今は珍しい存在として注目を集めていると思いますが、今後は自分のキャラクターとともに、どんな生き方、考え方をしているのか、人として見られる部分が増えてくるでしょう。特にeスポーツは、ゲームに対する偏見があるので、人としてしっかりしているところを見せることが必要だと思っています。

 他に変わったところは、メディアへの露出も含めて、発信力ですね。街中で声をかけていただくこともあるし、ネット上で調子に乗った発言をしたら炎上もするし、めちゃくちゃ濃い時間を過ごさせてもらっています。普通に生活しているよりも成長が早いと感じています。

 --日本ではまだeスポーツというジャンル、プロゲーマーという職業が確立されていない。不安はなかったのか?

 プロになってお金をたくさん稼ぎたいという思いよりも、ゲームがうまいという才能があるのに、学校に行かなきゃいけないという固定観念で可能性をつぶすことが嫌でした。自分としては、ひもじい生活でもやりたい、自分の力を試したいという思いだけ。周りからは「収入が安定しない」「ばくちだ」「将来が見通せない」「結婚はできるのか」とたくさん反対されましたが、そういうことには正直興味がないんです。今もお金はほとんど使わず、親が管理してくれています。

 --収入源は?

 プロチームからの給料、大会での賞金、イベントの出演料などで、個人スポンサーはまだついていません。また、ユーチューブに自分のプレー動画をアップしており、そこから得られる広告収入が大きな割合を占めています。毎日何万人もの人が動画を見に来ている。冷静に考えると、すごいことですよね。ただし、そこで自分は稼げるヤツだと過信したらダメだと思っています。僕がすごいのではなく、ユーチューブとクラロワがすごいんです。

 動画は自分がどういうことを考えてプレーしているかを話したり、戦術などを解説したりしていて、頭の中を開示している感じです。先を読む力や高度なスキルを見せることで、視聴者にファンになってもらいたいと思ってやっています。

「けんつめし」という物語を楽しんでもらいたい

試合の合間にチームメイトらと作戦会議をするけんつめし選手(中央)。おこめちん監督(右)はけんつめし選手を「お調子者だが、プロ意識は高い。大きな大会でしっかりと結果を残す。緊張をパワーに返られるところが強み」と評価した=ソウルで2018年6月2日、兵頭和行撮影

 現在、クラロワは日本、韓国、その他アジア諸国・地域(中国を除く)で「クラロワリーグ アジア」を行っており、プロ選手が所属する12チームが冬の世界一決定戦への出場を懸け、しのぎを削っている。けんつめし選手はゲームメディア「ファミ通」などを運営するGzブレインが設立したプロチーム「FAV gaming」のキャプテンとして、アジア各国を飛び回る日々を送っている。

 --1日の練習量は?

 日中は会社に出社して7時間ほど集中して練習しています。その後、チーム練習をプラス2時間。通勤の電車内や帰宅してもやったり、他の人のプレーを見て勉強したりしているので、ずっとクラロワのことを考えています。チームではキャプテンですし、自分だけが学校などに行かず専業なので、誰よりも練習して、結果を残さないといけないし、チームの主軸としてお手本にならないといけないと思っています。試合中は練習通り平常心でやること、気持ちで負けないことを心掛けています。

 --昨年行われた世界一決定戦を見るため自費でロンドンまで行ったとか。

 金銭的に余裕があるわけではないので迷いましたが、これまで得てきた賞金の使い道としては一番有意義だと思い、渡英しました。選手の顔つきや会場の雰囲気、海外の選手が個人ではなくチームで動いていることなど今後に向けて得られたことは多く、行って良かったです。

 --6月12日にはクラロワの日本代表として、ジャカルタ・アジア大会の東アジア予選に出場したが、本大会に進めませんでした。

 まだまだ実力不足だなとわかったし、次こそ勝てるようにもっと練習してうまくなりたいです。教訓は「楽しみつつ勝つ!」。アジア予選は負けても勝っても全ての試合が楽しかったです。

 --国を代表して出場した。

 日本のeスポーツを、そしてクラロワを自分が引っ張っていくきっかけになると思っていたので、ゲームに恩返しができるなあと思い挑みました。しっかりと勝って本戦へ行って、もっと日本を盛り上げたかったです。今後の目標は結果を残すこと。本番で勝ちきる力をしっかりとつけて、世界1位になりたいです。

 --eスポーツ、クラロワを背負う覚悟は?

 ありますね。特に自分の場合は学校をやめてゲームの道に入った。大学進学が当たり前という中で、ゲームの才能を伸ばして成功するという道を開きたい。僕が成功できたら常識を一つ打ち破ることができる。

 また、未成年の僕が周りの人に支えられながら作り上げられていく、自分が物語の主人公になったような感覚があります。その物語を楽しんでもらいたい。臭いことをいうならヒーローみたいになりたいですね。勝つこと、結果を残すことはもちろん大事ですが、負けた時にも何かを残す、次も頑張れよと応援されるような存在になりたいです。

けんつめし 本名・太田研人(おおたけんと)「クラッシュ・ロワイヤル」のプロゲーマー。1998年、岐阜県生まれ。2017年5月の「クラロワ日本一決定戦」で優勝し頭角を現す。「けんつめし」の由来は、料理好きの研人が作った飯から付けられたあだ名で、中華料理が得意=ソウルで2018年6月2日、平野啓輔撮影

 --ある日、クラロワのサービスが終了してしまったら。

 クラロワでトップを極める、そのためにどういう努力をしたのかは、何にでも応用できると思います。逆に言えば、クラロワでトップをとれなければ、どのゲームでもとれないでしょう。もしサービスがなくなっても他でやっていけるように、きちんと努力して、人としても成長していかないといけない。やはり他の道でも成功したいので、過信せずに、周りで支えてくれる人への感謝を忘れずに行動すれば、別のものになっても助け合いつつやっていけると思います。独りぼっちにはなりたくないですから。

クラッシュ・ロワイヤル

 最大8枚で構成されるキャラクターのカードデッキを駆使し、3分間の戦闘中、自分のタワーを守りつつ敵のタワーを攻めるリアルタイム対戦型モバイルカードゲーム。2016年3月のリリース以降、世界各国のアプリセールスランキングで首位を獲得し、昨年12月に行われた世界一決定戦には、187カ国から2700万人が参加した。

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