メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

余録

ドイツ若手哲学者の「なぜ世界は存在しないのか」という本が…

[PR]

 ドイツ若手哲学者の「なぜ世界は存在しないのか」(講談社選書メチエ)という本が売れている。驚くことは書かれていない。多様なものの見え方やあり方そのものが実在し、その全てを包み込む世界と呼ばれるような意味が存在するのではないと説く▲思えば科学や経済学は、誰も知らないはずの全体があると想定し、数字と論理で空白を埋める営みだ。それではうまくいかないと皆が疑う今、不安に答えようとした哲学が読者を引き付けるのか▲「セカイ系」という造語がある。超能力少女や巨大ロボットが、セカイの存亡を懸けて戦うアニメやゲーム、音楽などのサブカルチャーを指す。バンド「SEKAI NO OWARI」や映画「君の名は。」などが人気だ▲社会や歴史の文脈を飛ばして一気にセカイへ結びつける歌や物語は幻想的だが、科学的な思考の外枠だけをまとう。それを楽しむのも現代社会の感性である▲世界は存在しないと言われても、不安は薄らぐどころか増すばかりだろう。サッカーに沸くロシアをはじめ各国に強権指導者が台頭し、民衆の支持で在任期間は長引く一方だ。いずれも自国第一主義を掲げ、路線を巡って各国内に敵か味方かの分断が生じている。それは国境を越え、世界の分断へつながる▲全体がなければ分断もない。分断の政治は、世界や国家が実在するという楽観を前提にしている。敵と味方がそれぞれ民衆の支持を取り付け合う時代、分断を解く力は民主主義に備わっているだろうか。

    おすすめ記事
    広告
    毎日新聞のアカウント
    ピックアップ
    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 農業後継者、高専、120年超す伝統校…センバツ21世紀枠 9候補はこんな学校

    2. JR茨木駅で男性転落、右足一部切断の重傷 約3万人に影響

    3. 上皇后さま体調不良続く 精神的なストレスが原因と宮内庁

    4. ラグビー日本代表・プロップ具智元が日本国籍取得

    5. 白いマダコを展示 水族館スタッフ「擬態できず、苦労したと思う」 下関・海響館

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    今週のおすすめ
    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです