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マティス米国防長官が韓国と日本を相次いで訪問し、北朝鮮の脅威に対する防衛態勢の維持を確認した。
先月の米朝首脳会談では朝鮮半島の完全な非核化で合意したが、北朝鮮の核・ミサイル廃棄へ向けた具体的な協議は進んでいない。
現時点で北朝鮮が核実験やミサイル発射を行う可能性は低いが、脅威自体がなくなったわけではない。
経済制裁も含めた北朝鮮への圧力は引き続き必要であり、日米、米韓の防衛当局間でその点を確認したことは評価できる。
日韓両国には、トランプ米大統領が北朝鮮との融和に前のめりになるあまり、米軍の抑止力が弱まるのではないかとの不安がある。
トランプ氏が同盟国との調整なしに米韓合同軍事演習の中止を打ち出し、将来的な在韓米軍の撤退にも言及しているためだ。
米韓演習の中止は平和的解決へ向けた外交の後押しと位置づける一方で、在韓米軍の規模は維持する。マティス氏はこう説明することで、同盟国の不安払拭(ふっしょく)に努めた。
小野寺五典防衛相との会談では、自衛隊と米軍の共同訓練を着実に実施し、洋上で物資を積み替えて経済制裁を逃れる「瀬取り」の監視も続けることで一致した。
北朝鮮の非核化へ向け日本側が不安視しているのが「完全かつ検証可能で不可逆的な廃棄」(CVID)の対象範囲だ。「生物・化学兵器も含むすべての大量破壊兵器」と「あらゆる射程の弾道ミサイル」を廃棄させなければ日本への脅威は残る。
会談後の共同記者会見で、小野寺氏は「一致した」と強調したが、マティス氏が踏み込んだ発言を避けたのが気にかかる。
北朝鮮との関係改善に積極的な韓国と拉致問題を重視する日本の温度差もある。北朝鮮側も日本を交渉当事者と認めない主張をしている。
拉致問題は日米の防衛協力と直接リンクはしないが、マティス氏は共同会見で「拉致問題の重要性も認識している」と触れる配慮をみせた。
しかし、日米韓の防衛当局間で現状維持を確認しても、トランプ外交の不確実性に不安は消えない。
ポンペオ国務長官が近く再訪朝する見通しとなった。連携を密にしながら北朝鮮の出方を注視したい。