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美術

草野貴世個展「裏返り続ける…」(北九州市八幡東区)

 <日曜カルチャー>

     福岡県在住の美術家、草野貴世(きよ)の2年ぶりの個展「裏返り続ける…」が、北九州市八幡東区東鉄町の「OperationTable(オペレーションテーブル)」で開かれている。動物病院だった建物を改装したアートスペースを舞台に、蜜蝋(みつろう)や鉛、水、鏡を使ったオブジェなどを点在させたインスタレーション(空間芸術)。医療現場として集積された歴史や記憶と共鳴し、対話を試みている。

     昭和レトロの重厚な造りの室内に足を踏み入れると、蜜蝋の作品としばしば出合う。ロンドン大スレード校彫刻科在学中から「皮膚に似ている」との理由から慣れ親しんできた素材である。かつて薬品が並んでいた小部屋は床から壁に至るまで、表面全体が蜜蝋(正確には蜜蝋が塗られた布)。黄色系で統一された空間は静謐(せいひつ)さと厳粛さをたたえている。素足になり、内部に入って歩くことも可能。足の裏を通し、作品とつながった感覚を味わえる。

     オペレーション テーブルのシンボルであり、スペース名の由来にもなった手術台(動物用)も作品に取り込んでいる。台を二つつなぎ合わせ、成人が寝転べるほどのサイズを確保。鉛の板を組み合わせ、蜜蝋を塗った上に水を張った“異形”の手術台を出現させた。天井からは水をためた透明のビニールシートがつるされている。ビニールシートと手術台の水は光を浴びてきらめいているが、至近距離で拮抗(きっこう)し、緊張感をはらんでいるように見え、力学を感じさせる。

     ガラスケースに納まるのはマネキン人形の上半身。頭部はない。胴部に垂直に走る、幾筋もの赤い線は糸。腰の辺りから下部に広がるベンガラと呼応している。本人が「血潮、内側にある色」と捉えている赤の多用。造形的には死体そのものだが、左胸の上に付着する南天の実に注目したい。作家にとって植物の種は「休息し、エネルギーをため込んでいる生命の象徴」。種の形に似た南天の実には再生の願いが託されているのかもしれない。

     草野は1965年生まれ。90年代初めから九州の現代美術シーンを引っ張ってきた。子育てでブランクを経験したが、異なる素材を有機的に組み合わせ、観者の想像力を刺激する作風は健在。

     9月2日まで(土日の午前11時~午後6時のみのオープン)。平日は予約(090・7384・8169)。【渡辺亮一】

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