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未来へのレール

旧三江線廃線後の行方/3 代替バスで宇都井駅へ /島根

今は立ち入り禁止となっている宇都井駅。2018年夏以降、宇都井駅は実証実験で、ホームまで上がれるようになる予定=島根県邑南町で、陶山透さん撮影

 三江線廃止後に走り始めた「代替バス」。鉄道の代わりに走らせるので、当面の間はJRが支援することになっている。

     私が住む邑南町では、旧三江線口羽駅付近と広島県三次市をつなぐバスが高齢者にとって通院や買い物に必要な「生命線」だ。そして口羽から「天空の駅」がある宇都井をつなぐ路線(平日3往復)は、今年4月の1日あたりの利用者が1・3人と厳しい状況だ。

     三江線の廃線が現実になる直前、宇都井駅の1日あたりの利用者が1人以下だったことを考えると、予想された数字とも言える。ただ、利用者が少なければバス運行の収支が悪化し、JRの支援額が増え、代替バスの運行期間は短くなる。いつ廃線か、と心配していた三江線と同じ構図がまた繰り返される。「乗らないと路線がなくなる」と自治体が利用を呼びかけても、住民は「無理して乗ることに意味があるのか」と困惑する。

     邑南町で三江線が走っていた羽須美地域(旧羽須美村)の人口は、1952年に6400人だったが、現在は4分の1以下の1500人。旧三江線沿線はほぼ似通った状況だ。過疎地域では、鉄道やバスに頼る交通弱者でさえ少ない。住民だけでは公共交通を守れない現実は、三江線が廃止された後にも変わらずにある。

     私たちが、三江線跡を使った振興策に取り組む理由の一つは、地域外から多くの人を呼び込み、このバスに乗ってもらいたいからだ。鉄道ファンが宇都井駅を目指すならば、三次までJRを利用する人も多いはず。中には三次からバスに乗って、口羽や宇都井を訪れてくれるかもしれない。宇都井駅が「鉄道ファンが訪れたい場所」になれば、住民以外のバス利用者を増やすことにもつながる。

     6月18日、NPO法人江の川鐵道の要望を受けた邑南町は、JR西日本との間で、宇都井駅と口羽駅を7月から来年1月まで無償で借りる契約を結んだ。今後、江の川鐵道が安全性を確認しながら、観光客を呼び込む実証実験に挑むことになる。

     実験では、宇都井駅のホームまでは階段で上がれるが、線路内の立ち入りは禁止だ。線路脇の鉄柵に一部腐食があり、線路に降りると危険があるとの判断だ。線路の上は走れないという制約の中で、「どれだけ安全に、楽しいことができるか」が問われる。階段の傾斜を使ったそうめん流しができたら面白い。階段の踊り場に店主が陣取る古本市はぜひやりたい。宇都井駅が開業した8月31日に駅の誕生会を開き、43本のろうそくを灯(とも)そうか。まずは、広くアイデアを募るコンテストをやろう。

     楽しいイベントがあれば訪れる人は増える。多くは車で来られるかもしれないが、少しでもバスに乗ってもらえればうれしい。鉄道がなくなったこの場所から、地域の魅力を高めることで公共交通を支えるモデルを目指したい。このチャレンジもまた面白い。(NPO江の川鐵道会員、森田一平=邑南町在住)=随時掲載

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