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難病患者の医療費助成制度の変更によって、「軽症」と判断され助成対象から外された患者が全国で約14万8000人に上ることが厚生労働省の調査でわかった。助成を受けていた患者の2割に上る。
原因がよくわからず治療法も確立されていないのが「難病」だ。軽症とされても症状が変化することもある。個々の患者の実情を把握し、きめ細かく配慮することが必要だ。
計56の難病については国が治療費を助成する制度が以前からあった。ほかにも患者数が少ない難病は多数あり、2015年に施行された難病法で331の難病にまで助成の対象が広がった。一般の患者の自己負担は3割だが、難病患者の場合は2割となり、所得に応じて月3万円までの負担上限も設けられている。
対象拡大と同時に導入されたのが、軽症者を助成の対象外にする措置だ。高額な治療を継続しなければならない軽症の患者は引き続き助成を受けられるが、それ以外の人で医師から「軽症」と診断され、都道府県で「不認定」とされると、助成を打ち切られる。
厚労省の調べでは「不認定」とされたのは全国で約8万4000人。医師の診断で「軽症」とされたことなどから都道府県へ申請をしなかった人が約6万4000人という。
難病の患者は発症してから診断が確定するまで長期間、複数の医療機関を渡り歩く人が珍しくない。療養や通院のために仕事を失う人もいる。助成を打ち切られることへの患者の不安は大きい。
患者数が少ないために専門医がおらず、製薬会社が新薬開発に乗り出さないことも、難病の治療研究が進まない要因となっている。このため、旧制度では助成対象の患者は診断書の提出が義務づけられ、疾患ごとの患者数の把握や病状分析の基礎データとして研究に活用されていた。
軽症者が助成対象から外れることにより、もともと数の少ないデータがますます集まらなくなることも懸念されている。
軽症というだけで助成を打ち切るのは、患者の生活にとっても治療法の研究にとってもマイナスだ。現在、厚労省は助成の対象外となった患者の生活実態を調査している。現実に合った制度の運用が求められる。