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社説

ハーレーが生産を米国外へ 墓穴を掘ったトランプ氏

 「墓穴を掘る」とはまさにこのことを指すのだろう。

     米オートバイ大手のハーレーダビッドソンが、米国内の生産の一部を国外に移すと発表した。解雇を余儀なくされる労働者も出るだろうが、米トランプ大統領の保護主義的な通商政策が招いた当然の結末である。

     発端は欧州連合(EU)からの鉄鋼やアルミニウムに対し、トランプ政権が高率の関税をかけたことだ。外国製品を不利にすることで国内の産業や雇用を守る狙いがあった。

     ところが、EUが米国製品に報復関税をかける対抗措置に出た。ハーレーのオートバイは標的にされた一品目だが、社の幹部がホワイトハウスに招かれたり、大統領選中に愛好者が集団でハーレーに乗りトランプ氏支持を訴えて回ったりと、「トランプ的アメリカ」の象徴でもあったことが狙われた大きな理由だろう。

     「米国第一」「海外から雇用を取り戻す」が決まり文句のトランプ氏は、ハーレーの生産移転計画を裏切り行為ととらえ猛攻撃した。だが、ハーレーにとっては、極めて合理的経営判断に過ぎないのである。

     トランプ氏は、米国との貿易で黒字になる相手国を「不公正」とみなす。関税引き上げなどで制裁を与えることが米国のためになると思っているようだ。しかし、輸入品の価格が高騰すれば消費者の負担増となり、相手国が報復関税で対抗すれば、今回のように企業は生産を国外に移す。雇用が失われる。

     中でも、トランプ氏の支持層とされる工業地帯の白人労働者が最も重いしわ寄せを受けることだろう。

     ハーレーは恐らく最初の事例に過ぎない。「ジャックダニエル」で知られる米酒造大手のブラウンフォーマンはEUの報復関税を受け、欧州向け製品を値上げするそうだ。結果として販売が落ち込めば、経営に打撃となるはずである。

     貿易戦争に勝者はない。一方で、報復が報復を呼べば、世界経済は次第にモザイクのように分断され、成長が鈍り、先進国も貧しい国も全てが敗者となる。

     21世紀の我々は、互いに依存するグローバル経済の中にいることを米大統領は学ぶ必要がある。怒るべき対象はハーレーではなく、墓穴を掘った自分だと気付く機会だ。

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