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麺食い・列島味便り

地粉うどん 群馬・安中 製麺機復活で地域に絆

 群馬県は一大養蚕地だった。昭和の終わりごろまで養蚕農家には一家に1台「手動製麺機」があったらしい。子どもたちが製麺機で夕食用のうどんを作るのが午後の光景だった。地域の絆や文化が失われつつある今、県西部の安中市で、その製麺機が復活しつつある。地元産小麦から「地粉うどん」を作り、太くコシのある地域づくりが始まっている。

     製麺機は木製の台座に手回し用のハンドルが付く。使い方は簡単だ。こねた小麦粉をローラー部分に入れ、生地がなめらかになるまで数度伸ばす。切り刃部分に入れ替えハンドルを回せば、するすると麺がはき出される。

     また、群馬は小麦の生産高が全国4位でもある。「ゆでると、まさに小麦色。コシのある麺ですよ」。安中市の民間団体「未来塾」代表の松本立家(たつや)さん(61)が言う。これまでバザーなど地域おこしに取り組み、昨年思いついたのが製麺機の復活だった。「郷土食の粉食文化を発信することで、地域の輪を広げたい」

     安中市は、世界遺産の富岡製糸場がある富岡市に隣接する。松本さんの妻、千奈美さん(61)も養蚕農家に生まれた。製麺機の記憶は家族の原風景とも重なる。「お蚕さんに桑やりするのが親の仕事なら、うどんを作るのは“子どもの仕事”。毎朝、仕事前の母親が小麦粉を丸めておき、ふきんをかけて寝かせ、それを学校帰りの子どもたちがうどんにした。今思えば、家庭で簡単にできる“ごちそう”の一つです」

     親戚一同が集まる時は、煮干しでだしを取り、しょうゆで味付けしたものに山菜を加える。ただ、1回でできるのは1人分だ。手間がかかるため、家族分のうどんを3人姉妹が当番制で作ったという。

     松本さんは、地元農家を一軒ずつ回り、蔵や納屋で何十年も眠っていた製麺機を集めたという。家電修理業で培った腕を生かし、丁寧にさびを取り、慎重に分解して組み立て直した。これまでに100台以上集め、約50台を修理した。寄付してもらった機械には番号をつけ大切に保管している。「その家々の歴史が刻んでありますからね」。そして修理する中、「この地域ならではの食文化をなくしたくない」という思いが強くなった。

     未来塾は、地域や市在住外国人とのイベントで製麺機を使ったうどんづくりを紹介している。「まずは大勢の人に見て触れてほしい。今後は製麺機を県内外の人にも貸し出せるようにしたい」【神内亜実】


    糸繰り機から着想 養蚕農家らが購入

     手動製麺機は、「鋳物の町」として栄えた埼玉県戸田市などで主に製造された。

     松本さんによると、群馬、埼玉のほか、長野、山梨でも使われていた。元々、糸繰り機から着想を得たらしく、養蚕農家は農機具と一緒に購入することが多かった。機械の様式はさまざまで、群馬県の郷土料理「おっきりこみ」用に使う太麺専用の機械もある。

     「未来塾」(群馬県安中市岩井638)は手動製麺機を使ったイベントを随時開いている。11月には安中市で手動製麺機約100台を展示する。問い合わせは027・381・2597(松本立家さん)。

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