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余録

「碁敵は憎さも憎し懐かしし」は落語「笠碁」のまくらである…

 「碁敵は憎さも憎し懐かしし」は落語「笠碁(かさご)」のまくらである。38年前に急死した四代目三遊亭小円遊(さんゆうていこえんゆう)の「笑点」追悼大喜利で桂歌丸さんが一言こう述べたのは、2人の罵倒のかけ合いが番組の看板だったからだ▲1966年に始まった「笑点」の大喜利は、70年代に「キザ」が売り物の小円遊と、30代で髪の薄い歌丸さんという2人のキャラクターの罵倒合戦が大人気を呼んだ。演芸番組をキャラクターショーに変えたテレビの技術革新だった▲現実の2人は1年先輩の歌丸さんが小円遊に古典落語の稽古(けいこ)をつける仲だった。ただ当時は視聴者もナイーブだったのだろう。2人が一緒にいるところを見た人から「仲が悪いはずでは」と言われ、以後気をつけるようになったという▲日本が高度経済成長の坂道を一心に駆け上がった時代に生まれた「笑点」だ。その当初からの大喜利メンバーの歌丸さんは、自らの闘病や死すらもキャラクターショーのネタに変えたかのようにひょうひょうと「歌丸さん」を貫いた▲こちらもその裏の現実がある。晩年は古典落語の消えた演目の復活に尽力し、3年前の腸閉塞(へいそく)の退院直後は正座もできぬ姿を見台(けんだい)で隠して1時間の高座をつとめた。「落語を残すのも、落語のお客様を残すのも噺家(はなしか)の責任なんです」▲もしも大喜利がなかったら、今ごろ落語はどうなっていたか。テレビしか見なかった若者が古典落語の面白さに目を見張り、豊かな才能が続々高座をめざす落語界をこの世に残し、歌丸さんが旅立った。

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