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クローズアップ2018

悪質タックル、大学理事「口封じ」圧力 問われる日大の体質

 悪質タックルにより、今季の公式試合出場停止処分を受けた日本大アメリカンフットボール部が再建の正念場を迎えている。日大が真相解明のために設置した第三者委員会(委員長・勝丸充啓弁護士)は不当な圧力、介入を行った関係者の存在を明らかにした。これまで内田正人前監督の影響力の排除が焦点だったが、改めて組織の隠蔽(いんぺい)体質をあらわにした。第三者委は大学当局のガバナンス(組織統治)のあり方も追及する姿勢を示している。【村上正、田原和宏、松本晃】

辞任後も「内田色」濃く

 5月6日にあった関西学院大との定期戦から8日後。日大関係者は井上奨元コーチを介して選手らを三軒茶屋キャンパス(東京都世田谷区)に呼び出し、こう詰め寄った。「タックルが故意に行われたものだと言えばバッシングを受けることになるよ」。第三者委の調査が明らかにしたのは内田氏や井上氏でもない新たな存在による「口封じ」だった。

 関係者によると、この人物は日大理事でアメフット部OB。同部コーチも務め、先輩にあたる内田氏に近い存在だった。内田氏が5月19日に監督を辞任してから、1カ月以上が過ぎてもなお、部の再建の道筋が見えてこないのは、この理事の存在がある限りは内田色が色濃く残っていると受け止められているからだ。

 関東学生連盟は5月末(6月26日に正式決定)に内田氏と井上氏を除名処分とする一方で、秋のリーグ戦出場は「抜本的なチーム改革・組織改革の断行」などの条件付きで認めた。大学当局は再建にあたり、OBを除外した外部指導者の招請を掲げた。有力OBを担ごうとした父母会やOB会と相反しても、大学当局は「関東学連からはOBはダメだと言われている。それに監督を決めるのは大学」と耳を貸さなかった。

 外部を掲げた大学当局の動きは一見すると「内田色の一掃」とも映るが、実際に主導していたのが、この理事だったとされる。外国人指導者の登用を試み、条件の提示まで進んだものの、父母会やOBは「内田体制の影響力が残る」と猛反発。大学当局は断念せざるを得なく、6月19日に父母会やOBに無断で監督、コーチの公募を始めた。

 こうした動きをけん制したのが関東学連だった。同月22日、日大に対して処分の解除要件の留意事項を通知した際、この理事を念頭に「望ましくない一部理事」と唐突に触れ、「指導者(または背後の権力者)によるワンマン体制に陥らないような仕組みが構築できているかなどを検証・判断する」と突きつけた。大学当局が盾にしていた関東学連の見解も「新指導陣にOBを起用することを否定していない」と覆した。

 学連の処分から1カ月を経た6月29日、外部の弁護士7人による第三者委は関係者が疑心暗鬼に陥っていた再建の道筋の方向性を示した。チーム再建に向けては「不当な圧力、介入を行った日大関係者を完全に除外された状態で行わなければならない」と指摘。新指導陣も「内田氏の影響力を完全に遮断し、新たに編成されることで再建の一歩を踏み出すことを期待する」と締めくくった。

 6月28日に締め切った公募には京都大元監督で4回の日本一に導いた水野弥一氏(78)ら69人が名乗りを上げた。今後の選考について、日大関係者は「不当な圧力や介入がないよう、外部を加えて選考を進めていかなければならない」と説明する。大学当局が内田色の一掃に踏み込めるのか。その姿勢がまさに問われている。

「経営側にも問題」

 理事や職員による悪質タックルの隠蔽工作が明るみに出たことで、アメフット部にとどまらず、大学当局の体質も問われることになりそうだ。日大内部からも既に「抜本的な改革」を求める声が上がっている。

 日大の大塚吉兵衛学長はこれまで「運動部の統括は私の責任」と強調して、一連の騒動はアメフット部内の出来事との認識を示していた。しかし、第三者委は中間報告書で、理事や職員が悪質タックルの「もみ消し」を図ったことを浮き彫りにし、「事後対応の問題点として看過できない事実であり、今後、日大のガバナンスの在り方を検討する上で十分に勘案する」と指摘した。

 日大は2013年に総長制を廃止し学長制に移行した。それまでは教員である総長が理事長を兼務することが多かったが、学長が教学の統括責任者となったことで、理事長の権限が強まった。頂点に立っているのが、日本オリンピック委員会副会長などを務め、アマチュア相撲界の実力者の田中英寿理事長だ。大学経営の意思決定をする理事会(定数=36人以内)の構成について、日大教職員組合は「半数以上が理事長の息のかかった者が選ばれる」と指摘する。理事長のワンマンとも言える体制に、ある理事も「理事会ではみんな怖くて意見は言えない。たとえ勇気を振り絞って手を挙げても、完全に無視される」とため息をついた。

 日大には100%出資する関連会社「日大事業部」がある。関係者によると、各学部の研究費などは全て同社を通じて見積もるほか、日大オリジナルグッズの販売、各学部や付属校への物品納入も取り扱い、日大本部に権限と資金が集まる仕組みだ。内田氏も取締役を務めていた事業部の収益を伸ばしたのが今回「もみ消し」に動いたとされる理事で、理事会内でも田中理事長の信頼を得たという。

 日大教組は田中理事長の辞任などを求める要求書を公表し、賛同する署名数は、既に提出したものを含めて6月末で5000人を超えた。第三者委は7月末に公表する予定の最終報告書では大学のガバナンスや再発防止策も盛り込む。勝丸委員長は「経営側の問題も当然ある。十分に調査したい」と踏み込んだ。再発防止は日大の負の側面にも切り込めるかにかかっている。

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