<くらしナビ・カルチャー>
万葉集の研究で知られる上野誠・奈良大学教授(58)は、年間1000通を超える毛筆の手紙をしたためる書の愛好家だ。「『右』と『左』という字は、1画目と2画目の書き順が違うでしょう」。そうでしたっけ、と目を泳がせる記者を横目に、筆の毛先を白い紙の上にサラサラと滑らせると、優美な崩し字が現れた。「『右』は左払い、横棒。だから横方向に伸びる。『左』は逆で、縦方向に伸びる。毛筆で書くと記号的な意味だけでない文字のいろいろな情報が分かる」。長年厳しい稽古(けいこ)を積まれたのかと思いきや、「本格的に習ったことはなくて、展覧会に出すような書ではない。言ってみれば素人。でもそれが大事なんです」。誰でもない自分が「今」という瞬間を生きた証しを、文字に込めるのだという。
実は10年ほど前まで、書との縁はかなり薄かった。小学生の頃、地元の書道教室に通ったが2年でやめた。大学時代に国語の教員免許を取る際も、「書道」を修める必要のある中学校教諭の免許は諦めた。
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