SUNDAY LIBRARY

岡崎 武志・評『こないだ』『熱海の奇跡』ほか

  • はてなブックマーク
  • メール
  • 印刷

今週の新刊

◆『こないだ』山田稔・著(編集工房ノア/税別2000円)

 阪神タイガースへの熱狂という以外に、東西の差異はある。関西へ帰省した時、本好きの友人同士で必ず出る名前が山田稔だ。仏文学者で達意のエッセイスト。みな懐で温めるように愛読している。

 緑色の布表紙の『こないだ』は、日ごろ、目につかない雑誌や小冊子に発表された文章を集める。「こないだはどうも」と挨拶(あいさつ)を交わすような、親しい仲間たち(今は亡き)を、哀惜をもって回想する。富士正晴、天野忠、福田紀一、三輪正道、杉本秀太郎……。

 多田謡子は若くして死んだ人権弁護士。多田道太郎の娘として、幼い頃から知っていた。パリ滞在中、著者が謡子の結婚式のために送った祝電のメモから始まる。生き急いだ彼女に「人生はいつもバラ色ではないけれど、それでもやはり美しく、おもしろい」と書いた。

この記事は有料記事です。

残り1439文字(全文1809文字)

あわせて読みたい

注目の特集