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地域医療構想

病床再編目指す 「削減前提」反発強く 対応決めた医療機関1%未満

「地域医療構想のモデル」として全国から注目される魚沼基幹病院=新潟県南魚沼市で

 病院ごとの役割を明確化し、全体で病床数を減らす「地域医療構想」がなかなか進まない。政府は、医療費などの社会保障費が膨らみ、医療従事者の人手不足も懸念される2025年を医療の効率化で乗り切ろうとするが、「削減ありき」のため地域の反発も大きい。【酒井雅浩】

    25年の必要数推計

     「公立病院ですら地域の実情や政治に左右され、病床の再編は容易でない。将来の推計で余るからといって、民間病院に病床数削減の要請なんてできるのか」。ある自治体の担当者はため息をつく。

     地域医療構想は、都道府県が高齢化率や患者の傾向を踏まえ、25年の医療需要や病床数を推計、その上で、複数の市町村からなる2次医療圏ごとに16年度中に策定した。だが、構想に基づいた病床数の削減など対応が決まっている医療機関は17年度末現在、全国1万4000カ所のうち117カ所で、1%にも満たない。

     病床は、機能別に▽高度医療を担う「高度急性期」▽重症患者向けの「急性期」▽リハビリなどを行う「回復期」▽慢性病の高齢者が長期療養する「慢性期」に分類。構想では、急性期と慢性期の病床を減らし、回復期を増やすことを掲げる地域が多い傾向がみられる。

    国「20万床減可能」

     政府は地域内で協議を進めるよう促しているが、「順調とは言い難い」(厚生労働省幹部)のが実情だ。背景には、地域側に「削減ありき」に対する反発がある。

     厚労省は15年3月にまとめたガイドラインで、慢性期の患者の割合(入院率)を設定する際、「13年時点の最も低い都道府県」に合わせるよう求めた。さらに、政府が15年6月、25年の全体の病床数を「13年の134万7000床から最大20万床削減できる」との推計を発表した。

    現場「患者あふれる」

     その理由について厚労省は「病床数が多い地域は医療費が高い傾向にあるため」と説明する。例えば15年度は、高知県が人口1人当たりの医療費(44万4000円)、人口10万人当たりの病床数(2522・4床)ともに全国最多だ。これに対し、構想策定に携わったある自治体の関係者は「(高知県の例を出しながら)国から『病床数が多いと医療費が高い』と言われれば、『削減』を前提にせざるをえなかった」と打ち明ける。実際、都道府県の構想を積み上げると、13万床の削減になる。

     13年度の診療報酬明細書を基にした政府の試算によると、対策せずに高齢化が進んだ場合、25年の必要病床数は152万床に膨らむという。自治体病院幹部は「『削減ありき』で進めれば、患者が行き場を失う可能性がある」と指摘する。

     厚労省地域医療計画課は「今、再編に取り組まなければ、地域医療は近い将来崩壊する」と理解を求めている。

    新潟のモデル病院 開業3年、誤算続き 看護師不足、増床進まず/手術待ち長期化

     新潟県南魚沼市の「魚沼基幹病院」は、4病院の病床再編などにより、15年6月に開業した。医療圏全体で病床数を減らす一方、これまでになかった高度医療の拠点病院が誕生し、「地域医療構想のモデル」として全国から注目されている。

     魚沼医療圏で再編が持ち上がったのは00年。当時の県立小出病院(現魚沼市立)の老朽化を受け、自治体や病院、医師会などで地域医療のあり方について検討を始めた。同県基幹病院整備室は「当時は参考事例もなく、手探りで時間がかかったものの、地域全体で問題意識を共有し、協議を続けてきたことが基幹病院の開業につながった」と話す。

     開業から3年が経過したが、実績は計画からかけ離れている。当初は「17年度に454床まで増床し、18年度以降は経常黒字」を掲げていた。病床数は今年度、開業当時の308床にとどまり、4億3000万円の赤字となる見込み。看護師不足で病床数を増やせないことが最大の要因という。

     しかし、人手不足は採用数が原因ではない。毎年、約50人と目標通りに集められており、退職者もほとんどいないものの、実働看護師は30人程度しか増えていない。産休や育休の看護師が予想を上回ったためだ。

     稼働している病床の運用にも課題がある。病床稼働率は85%を超え、平均入院日数は11日。一方、重症患者の手術は滞っており、泌尿器科で平均2カ月待ちだ。「高度医療を終えた患者は周辺病院に転院する計画だったが、うまく進まない」と内山聖院長は話す。

     魚沼医療圏は医師不足が深刻な地域だった。基幹病院開業前の14年、人口10万人当たりの医師数は119人と全国平均(244・9人)の半分以下。16年には144・4人と伸びたが、全国平均(251・7人)との差は大きい。増えたのは基幹病院の高度医療を担う医師と推測され、内山院長は「回復期の病院に転院すべき患者まで基幹病院が引き受けることで、地域医療は何とか持ちこたえている」と話す。

     基幹病院は今年3月、事業計画を見直し、454床の実現を22年度に後退させた。20年度の黒字化を見込むが、「計画達成はゴールではなくスタートだ」と内山院長。「地域医療構想は、病院ごとではなく、地域の全てを一つの病院とみなして取り組まなければならない。数字に表れない連携の仕組みづくりなど、地域で医療をどう完結するかという熱意が問われる」と訴える。

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