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毎日フォーラム・ファイル

エネルギー基本計画 再生エネ拡大の長期的道筋示さず

再生可能エネルギーを主力電源にすることができるか。福島県飯舘村に設置されたメガソーラー=2018年3月4日

従来の電源構成目標を維持 「脱炭素化」実現に疑問

 政府の「エネルギー基本計画」の改定案がまとまった。再生可能エネルギーについては、今世紀半ばに向けて「主力電源化」する方針を新たに打ち出したが、導入拡大の長期的道筋は示さなかった。原発については「依存度を可能な限り低減する」としつつ、「重要なベースロード電源」として活用する現行計画を踏襲した。その結果、2030年時点の再生エネや原発の電源構成は従来目標が維持されることとなり、大胆さや新味に欠ける内容となった。

     地球温暖化対策の新枠組み「パリ協定」が16年に発効し、世界が再生エネの導入に大きく舵を切る中、エネルギーや環境問題の専門家からは「原発の比率が高すぎ、再生エネの比率は低すぎる」など疑問の声も上がっている。

     エネルギー基本計画は国の中長期的なエネルギー政策の指針だ。改定は4年ぶりで、今回が第5次となる。昨夏から、経済産業省の有識者会議で議論されてきた。

     パリ協定は今世紀末の地球の平均気温の上昇を産業革命前に比べて2度未満、可能なら1.5度未満に抑えるため、今世紀後半に世界の温室効果ガスの総排出量を実質ゼロにする目標を掲げている。

     日本もパリ協定を踏まえ、温室効果ガスの排出量を30年に13年比で26%削減、50年には80%削減する目標を掲げる。このため、第5次計画では、30年に向けた中期目標と、50年に向けた長期戦略を同時に示すことにした。

     再生エネについては、長期戦略で「経済的に自立し脱炭素化した主力電源化を目指す」と明記。発電時に温室効果ガスを出さない原発についても、「長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」と位置付け、50年時点でも脱炭素化の選択肢の一つとしている。

     ところが、30年時点の電源構成比は、現行計画の下で経産省が15年7月に策定した長期エネルギー需給見通しで示した目標を、そのまま受け継ぐことになった。

     具体的には、原発20~22%▽再生エネ22~24%▽石炭火力26%▽石油火力3%▽液化天然ガス(LNG)27%--となる。

     30年に原発で20~22%をまかなうという目標の実現には、30基程度の稼働が必要となる。

     経産省は、原則40年とされる原発の運転期間を60年に延長すれば30年目標を達成できると説明するが、福島第1原発事故以降、再稼働した原発は9基にとどまる。電力業界ですら「20~22%は非現実的だ」との意見が多い。目標実現には原発の新増設や建て替えの議論が不可欠と見られるが、世耕弘成経産相は「現時点ではまったく想定していない」との立場だ。

     なんとも中途半端な現状維持路線の裏には、原発推進を掲げつつも再稼働や新増設に反対する国民の根強い声を無視できない、安倍政権のジレンマが見え隠れする。

     主力電源化を目指す再生エネについて改定案は「現時点では安定供給面、コスト面でさまざまな課題が存在する」と指摘。50年をにらんだ施策についても「(これまでの延長線上ではない)非連続の技術開発が必要」として、具体的な数値目標などは示さなかった。

     だが、送電網を通じて隣国と電力を融通しあえる欧州では、再生エネが既に主力となっている。

     15年時点で電源構成における再生エネの比率はイタリアが40%、スペインが35%、ドイツが30%を超えるなど日本の導入目標のはるか上を行く。日本と同じ島国の英国でも25%を超えた。太陽光発電のコストは欧州全体で1キロワット時当たり10円と日本の半値の水準だ。

     中国の再生エネ導入スピードもめざましい。この10年間では世界で最も導入量が多く、16年の再生エネの比率は24.5%だった。

     一方、日本は16年時点で再生エネの比率が15.3%にとどまる。

     こうした現状については、政府内にも危機感がある。アラブ首長国連邦(UAE)で今年1月に開かれた国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の総会に出席した河野太郎外相は「再生エネの電源割合の世界平均は24%で、日本が30年に目指す数値が今の世界平均ということは、外相として嘆かわしい」とスピーチした。

     もっとも、日本の再生エネの比率は、福島第1原発事故後の12年に固定価格買い取り制度(FIT)が始まったこともあり、着実に上昇している。

     大幅な導入拡大には、コスト削減や安定供給のための蓄電池などの開発、送配電網の増強などに長期的に取り組む必要があるが、30年に22~24%という目標を前倒しで達成することは十分に可能だと、環境省や外務省は水面下で主張していた。

     それでも経産省が電源構成で現行目標の維持にこだわったのは、やはり原発に要因があるようだ。再生エネの比率を上げ、原発の比率を下げるとなると、政府の再稼働路線に水を差す結果につながりかねないからだ。

     30年の電源構成を維持したことで、もう一つ世界の潮流に背いたことがある。東日本大震災後の原発停止や電力の自由化で建設計画が相次いだ石炭火力だ。

     基本計画で石炭火力は「安定供給性や経済性に優れた重要なベースロード電源」とされてきた。

     しかし、最新鋭の高効率発電であっても、同じ発電量であればLNG火力の2倍の二酸化炭素(CO2)を排出する。このため欧米の大手金融機関や投資ファンドの間で、石炭火力への投資から撤退する「ダイベストメント」の動きが広がっている。国内の金融機関もこれに追随しつつある。世界的に石炭火力の規制が強まれば、活用できないまま、いわゆる「座礁資産」化する恐れがある。

     こう見ると、新しいエネルギー基本計画はさまざまな矛盾を抱えている。原発再稼働が思うように進まない中で、再生エネの拡大にも後れをとった結果、化石燃料に頼って温室効果ガスの削減目標が達成できなくなる。そんな構図も浮かんでくる。

     エネルギー政策は、私たちの暮らしや生産活動の基盤となり、地球環境問題とも密接にかかわる。国際情勢や科学技術開発の進展を予測することが難しいのは確かだが、安易に現状維持に走るのではなく、国民にも開かれた多面的で透明性の高い議論が欠かせない。

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