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メディア時評

ヘイトスピーチとアベノミクス=白井聡・京都精華大専任講師

 ここ10年ばかりの日本の右傾化の最大のメルクマール(指標)は、ヘイトスピーチ(憎悪表現)の爆発的増大である。毎日新聞6月22日夕刊の「特集ワイド」は、ヘイトスピーチ対策法が2016年6月に施行されたにもかかわらず、この現象が引き続き活発な状態にあることを詳しく検証している。取り上げられているのは、ヘイトスピーチの拡散ツールとなっているソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)だ。とりわけ、対策が遅れているツイッターについては、批判的な言及がなされている。

     ツイッタージャパン社の笹本裕社長は、昨年11月放送のテレビ番組で「ヘイト自体は残念ながら僕らの社会の一つの側面だ」とし、「それ自体を認識しなくて社会が変わらなくなるよりは、それはそれでひとつあるということを認識して、社会全体が変えていくことになれば」と発言し、強い批判を招いた。憎悪感情の存在を人々に「認識」させるためには、それ自体が十分に人々を傷つけているヘイトスピーチを野放しにした方がよい、というのが同社トップの「思想」であるならば、対策に身が入らないのも当然か。ところで、記事中の「ヘイトスピーチのように関係省庁が複数にまたがる社会問題こそ、安倍晋三首相のリーダーシップが生かせるのではないか」という一文には井田純記者の痛烈なアイロニー(皮肉)の精神を感じた。

     ヘイトスピーチの氾濫は、何もSNS上だけのことではない。第2次安倍政権が成立し、アベノミクスが始まるや否や、書店の経済時事本のコーナーを、アベノミクス礼賛の書籍が埋め尽くした。これらの書物の特徴は、自己啓発本に雰囲気が似ていると同時に、「アベノミクスによって日本経済は劇的に成長する一方で、中国と韓国は経済崩壊する」と説いていることだ。こうした当たりもしない予言が物語るのは、これらの書籍は、経済時事本の姿を借りたヘイトスピーチ的言説にほかならない、ということだ。安倍首相の「リーダーシップ」が日本社会にもたらしたものは何であったのか、考えさせられる。(大阪本社発行紙面を基に論評)

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