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オウム真理教

教祖、語らぬまま 松本死刑囚、刑執行 独り言つぶやき続け

 「教祖」への死刑執行--。オウム真理教による一連の事件の首謀者と認定され、2006年に死刑が確定した教団元代表、松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚(63)らの刑が6日、執行された。救済の名の下に起こしたとされた1995年3月の地下鉄サリン事件など、一連の事件は日本社会を震撼(しんかん)させた。執行の報を、収容先の拘置所や後継教団施設の周辺住民も大きな衝撃をもって受け止めた。

     法務省関係者によると、執行前の松本死刑囚は東京拘置所の単独室内で座ったまま過ごす時間が長く、聞き取れない独り言をつぶやくこともあったという。「面会が来ている」と職員が呼び掛けても反応を示さない一方、食事は自分でとり、拘置所内の運動スペースで歩いたり、必要に応じて介助を得ながら入浴したりもしていた。

     刑事訴訟法は、死刑囚が心神喪失状態にある場合は法相の命令で執行を停止すると規定。松本死刑囚について、同省関係者は「面会、運動、入浴の区別はできており、執行に問題はない」との認識を示し、「定期的に専門医が診察しており、『執行に支障はない』との診断を出している」と明かす。

     松本死刑囚の精神状態に対する評価を巡っては死刑確定前から争われてきた。

     1審の死刑判決(2004年2月)後、2審の弁護団は「(松本死刑囚と)意思疎通ができない」として控訴趣意書を出さず、松本死刑囚に訴訟能力がないとして公判手続きの停止を求めたが、東京高裁は06年3月、趣意書未提出を理由に控訴棄却を決定した。

     決定は、高裁が実施した精神鑑定の結果を踏まえて「訴訟能力を欠いていない」と判断した。また、1審公判での言動や居眠りについては「死刑求刑が必至の裁判で、自ら装っていたという側面もある」などと指摘。判決後に拘置所で「なぜなんだ、ちくしょう」と大声を出したことに触れ、「(発言は)死刑判決を認識したためなのは明らか。判決後に拘禁性の精神障害を発病したとは認められない」と結論づけた。

     一方で、松本死刑囚の次女らは「拘禁反応が出ているのに十分な治療をしていない」として国などに賠償を求めた訴訟を起こしたが、東京地裁が09年6月、「適切な医療行為を怠ったとは言えない」として請求を棄却した(その後、最高裁で確定)。【和田武士】

    公判7年10カ月、257回

     「麻原彰晃と言います。その名前(本名の松本智津夫)は捨てました」「(職業は)オウム真理教の主宰者です」。東京地裁で1996年4月24日にあった初公判で、松本智津夫死刑囚(63)は自身を「教祖」と明言。約7年10カ月間で257回に及んだ1審公判はこうして幕を開けた。

     当初は弁護団との打ち合わせにも積極的だったが、96年9月の第8回公判で始まった弟子たちの証人尋問を境に態度が変化していく。松本死刑囚による指示を証言する弟子たち。翌10月の第13回公判では、地下鉄サリン事件の謀議を証言した井上嘉浩死刑囚(48)への尋問を中止するよう求めたこともあった。次第に不規則発言を繰り返すようになり、度々退廷を命じられた。

     97年4月の第34回公判。起訴された17事件について松本死刑囚が具体的な意見陳述を行った。全事件で教団の関与を認めたが「地下鉄サリン事件は、弟子たちにストップを命じた」などと16事件への自らの関与は否定。「アイ キャン スピーク イングリッシュ ア リトル」などと英語も交え、陳述は3時間近くにも及んだ。

     松本死刑囚は急速に公判に無関心な様子を見せるようになっていった。2003年3~4月の公判では被害者遺族が厳しい口調で極刑を求めたが、大あくびをしたり、居眠りしたりすることも。全審理が終わった第256回公判。最後の意見陳述でも沈黙したままだった。

     「被告人を死刑に処する」。04年2月27日の判決。言い渡しの瞬間、立ったままうつむいていた松本死刑囚は左手を固く握り、身動きしなかった。続いて裁判長から控訴手続きの説明を受けると、不服があるかのようにかすかに首を振り、小声で独り言をつぶやいた。【和田武士】

    「遺族に終わりない」

     松本死刑囚が収容されていた東京拘置所(東京都葛飾区)には6日朝、大勢の報道陣が詰めかけた。近くに住む女性(75)は「テレビで執行の速報を見て様子を見に来た。30年ぐらい住んでいるが、これほど報道陣が集まるのを見るのは初めて」と驚いた様子。「ついに、という思い。あれだけの事件を起こしたなら仕方がない気がする」と語った。

     元幹部の早川紀代秀死刑囚(68)の死刑が執行された福岡拘置所(福岡市早良区)にも報道陣が詰めかけ一時騒然とした。福岡県弁護士会の牧野忠弁護士は、東京地検の検事だった時に中川智正死刑囚(55)の取り調べをした。「彼らは『どうやったら世の中がよくなるか、人間を救えるか』と真面目に考えていたが、やり方がめちゃくちゃだった」。当時を振り返り、死刑執行について「洗脳された結果とはいえ、あれだけの被害を出し、因果応報としか言えない」と話した。

     オウム真理教の後継主流派「アレフ」の主要拠点である足立入谷施設(東京都足立区)は、時折、人の出入りがあるが、ひっそりと静まったまま。近くの70代男性は「オウムの解散・撤退を求めてきたが、(執行は)一歩前進と受け止めている。執行を受け、今後、教団が報復などをしないか心配」と話した。

     アレフから2007年に分派した「ひかりの輪」の本部があるマンション(同世田谷区)周辺も、大きな混乱はみられなかった。近くに住む自営業の50代男性は「ラジオで執行を聞き、急に来るんだと思った。世間的には時代の節目かもしれないが、亡くなった被害者のご遺族に終わりはない」と思いやった。

     アレフの福岡道場が入居する福岡市博多区の雑居ビルには公安調査庁の職員が検査に入った。【遠山和宏、金寿英、平川昌範、佐野格】

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