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はやぶさ2取材日記

運用に奮闘する管制室の様子をリアルタイムで伝えて=永山悦子

探査機はやぶさ2の運用に取り組む宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所にある管制室=相模原市で2018年6月24日、永山悦子撮影

 私は、はやぶさ2の先代「はやぶさ」のときから取材してきた。初めてきちんと取材したのは、2005年秋の小惑星イトカワへの着陸運用だ。その際、太陽の反対側の3億キロも離れた場所で頑張る探査機の一挙手一投足が、ほぼリアルタイム(注)で手に取るように分かることに驚き、宇宙探査取材のとりこになった。

 そのリアルタイムの発信に一役買ったのが、当時流行していたブログだった。プロジェクトチームの広報担当者がブログ管理人を務め、日本語と英語で管制室の様子(はやぶさの状況、メンバーの議論の様子など)が紹介され、インターネットを通じて世界へ「実況中継」された。2回の着陸の際に開設されたブログのアクセス数は、約100万件に上ったという。

探査機はやぶさの小惑星イトカワ着陸時、ブログを更新するはやぶさプロジェクトチームの広報担当者=寺薗淳也・会津大准教授提供

 はやぶさが10年に地球へ帰還する際は、プロジェクトにかかわる若手研究者3人がツイッターで情報発信した。現場で把握された情報を発信したほか、はやぶさの現状やプロジェクトチームの様子を分かりやすく、話し言葉で発信したことから多くのファンをつかんだ。

 彼らの取り組みによって、はやぶさという探査機を知るだけではなく、そこにかかわる人々の息づかいに触れることができた。やっていることや挑戦していることは極めて先端的で難しい科学技術だが、それに携わる一人一人の人たちが、泣いたり笑ったり歯を食いしばったりして支えていることこそ重要なのだ、ということに気付かされた。プロジェクトのメンバーのドキドキ、ワクワクを共有できることも宇宙探査の面白さの一つといえる。はやぶさは、その後の探査機、人工衛星における情報発信の「お手本」にもなった。

探査機はやぶさのブログの影響を伝える2005年11月30日の毎日新聞科学面の記事

 はやぶさ2では、開発段階からプロジェクトメンバーが管理人を務めるツイッターによる情報発信が続いている。フォロワーは14万7000人を超えている。小惑星リュウグウに到着し、いよいよリアルタイムで探査を共有できる絶好のタイミングを迎えた。来年末のリュウグウ出発までに着陸は3回、小惑星リュウグウへ降ろす着陸機の投下も3回計画される。着陸では、降下-着陸-上昇の間、手に汗握る運用になるだろう。特に、3回目の着陸前に計画されている衝突体(直径25センチの銅の球を秒速2キロで小惑星表面にぶつける)の発射は世界初の挑戦で、世界中から注目を集めるはずだ。

 そのとき、プロジェクトメンバーたちが、どのように頑張り、何に悩み、喜んだのか、ぜひリアルタイムで知りたい。国中均・宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所長は「相手のことがよく分かっていない小惑星探査では、絵に描いたような計画通りの運用には絶対ならない」と話す。そんな探査の醍醐味(だいごみ)も、後で結論が分かってから聞くのでは新鮮味がなくなってしまうだろう。

 JAXAは、欧米の宇宙機関に比べれば広報を担う要員が少なく、情報発信の充実に頭を悩ませているようだ。だが、このチャンスを生かさなければ、もったいないことこのうえない。奮闘する管制室の様子を、いかにリアルタイムに伝えるか。ぜひ、次世代の情報発信のお手本を目指してほしい。【永山悦子】


(注)リュウグウもイトカワも地球から約3億キロ離れており、探査機との情報のやりとりには片道約20分、往復約40分かかる。このため、探査機の状況把握には実際より遅れが生じる。さらに、その情報が公表されるまでの時間も必要になるため、スポーツ中継のように本当の意味でのリアルタイムで探査機の状況を知ることはできない。はやぶさ2がリュウグウに到着したのは6月27日午前9時35分、それを管制室が確認したのは午前9時54分、一般に公表されたのは午前10時46分だった。


 探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウへ到着し、探査が本番を迎えています。その現場を取材する記者たちが、記者会見や手に汗握る運用の裏話、プロジェクトメンバーへのインタビューのこぼれ話、宇宙探査への思いなどをつづります。

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