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稲荷山古墳の鉄剣、銘文に新説 被葬者の「墓誌」の可能性 「古墳の墓碑に類似」奈文研・馬場基室長

馬場基さん

 115文字の銘文で知られる稲荷山古墳(埼玉県行田市)の国宝「金錯銘(きんさくめい)鉄剣」が、古墳に埋葬された人物の「墓誌」のような役割を持っていたという説を、奈良文化財研究所(奈良市)の馬場基(はじめ)史料研究室長が示した。銘文の内容と、山上(やまのうえ)古墳(群馬県高崎市)の墓碑「山上碑」の銘文が似ていることに注目した。死者に直結する情報が書かれていることになり、古墳の被葬者論争にも影響を与えそうだ。

      ■  ■

     新著『日本古代木簡論』(吉川弘文館)に論文を収録した。鉄剣には表面57文字、裏面58文字の銘文が刻まれている。「辛亥(しんがい)(471)年七月中記す、乎獲居(をわけ)の臣(おみ)」から始まり、祖先からヲワケまでの8代の系譜と代々の功績▽刀を作った事実▽銘文を刻んだ事実--といった内容だ。

     1978年に発見された銘文は古代史研究に衝撃を与え、さまざまな研究がなされてきた。ヲワケを巡っては地元の豪族、畿内の有力者など諸説ある。稲荷山古墳の被葬者についてもヲワケ本人とみる立場と、ヲワケから剣を与えられた地元の豪族とみる立場がある。

     馬場さんはこの銘文を、江田船山古墳(熊本県和水町)出土の国宝「銀象嵌(ぞうがん)銘大刀(たち)」など他の刀剣の銘文と比較。作刀の経緯やその素晴らしさ、「剣を持つ人に幸せが訪れる」など吉祥を示す語句を並べ刀剣そのものを説明するケースが通常で、金錯銘鉄剣のように個人の系譜や顕彰が主な銘文は「かなり特異なもの」と指摘した。さらに「『ヲワケの活躍ぶりを記すために刀剣を作った』というニュアンスが感じられる。刀剣が優れているかどうかより銘文を残すこと自体に意味があったのではないか」と考えた。

     そこで思い出したのが山上碑だ。碑文は「辛巳(しんし)(681)年集(10)月三日に記す」で始まり、被葬者の女性「黒売刀自(くろめとじ)」やその夫の系譜▽銘文を記した目的▽記した人物--が並ぶ。「基本的な記載内容と順番がよく似ている。約200年という時代の差はあるが、両者の性格には相通じるものがあると考えられる」。稲荷山古墳の被葬者に関しても「ヲワケ本人である可能性が高く、そうでなくてもかなりの近親者」と結論づけた。

      ■  ■

     馬場さんの主な研究対象は木簡だが「木簡というモノだけを見るのではなく、当時の人間が何らかの目的を持って使った道具だという視点を大事にしてきた」。今回はその視点で鉄剣と向き合い「銘文と鉄剣を分けて考えるのではなく、銘文を書く媒体として鉄剣が使われた意味や状況を分析した」と振り返る。【花澤茂人】

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