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野外映画祭のススメ 波音や星空、無上の演出

海に浮かぶスクリーンで上映を楽しむ「うみぞら映画祭」=兵庫県洲本市の大浜海水浴場で、村瀬優子撮影

 波の音や満天の星に思いをはせながら、大自然の中で作品を鑑賞する野外映画祭が人気だ。ひと味違った映画の楽しみ方を提供するだけでなく、地域の活性化にもつながっている。その魅力を探った。【村瀬優子】

    海辺や湖畔にスクリーン 映像と音「体感する」感覚 グルメや環境、地域のPRに

     ゆっくりと日が暮れていく淡路島の大浜海水浴場(兵庫県洲本市)。波打ち際の海上には縦5メートル、横9メートルの巨大スクリーンが設置されている。大勢の家族連れらが砂浜に集まり、辺りが暗くなってから始まる上映を待つ。スクリーンの向こうに見えるのは海と空だけだ。

     5月19、20日に洲本市で開かれた「うみぞら映画祭」。浜辺には島の食材を楽しめるグルメブースが並んだ。軟らかな淡路牛とタマネギを使った「淡路島牛丼」を紹介していた島観光協会事務局長の福浦泰穂さん(55)は「淡路島は食料自給率が100%を超える食材の宝庫。おいしい物がたくさんあるとPRしたい」と意気込む。牛丼が食べられる店舗を紹介する地図も配布し、観光につなげる。

     おなかを膨らませて砂浜で待つと、午後7時過ぎからディズニー/ピクサーのアニメ「リメンバー・ミー」の上映が始まった。カラフルな「死者の国」に迷い込んだギター少年ミゲルを主人公に、時を超えた家族のつながりを描くファンタジー・アドベンチャーだ。ミゲルら登場人物のダイナミックな動きに引き込まれる。夜が深まるにつれ、スクリーンと空との境が分からなくなっていく。

     しかし、日没後は5月とは思えない寒さだ。風が吹きすさび、持参した毛布にくるまる人が多い。防寒具は必須だろう。

     あっという間に約2時間の上映が終わり、感動のラストに涙をぬぐう人も。友人と訪れた同市のフリーター、島崎成美さん(28)は「野外上映に合っている作品で楽しめた。空のシーンがあると、会場の空とつながって見えた」と感激。次いでジョニー・デップ主演の「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」が上映され、海賊たちがまさに「海の上」で大暴れした。

     ■  ■

     うみぞら映画祭は2016年に始まり、今年で3回目。洲本市出身で地元の海を愛する映像ディレクター、大継康高さん(36)が「たくさんの人に海沿いでほっこりしてもらいたい」と発案した。周りからは「海にスクリーンを立てるなんて聞いたことがない」と驚かれたが、島へのロケ誘致をするフィルムオフィスや、クレーン会社を営む知人らの協力を得て実現させた。

     第1回の開催に合わせ、淡路島を舞台にした映画「あったまら銭湯」も製作。大継さんが監督を務め、島出身の俳優、笹野高史さん(70)が出演を快諾した。島全域オーディションでヒロインに選ばれた県立淡路三原高3年、中尾萌那さん(17)は出演を機に女優を志し、現在は東京の芸能事務所に所属する。「島には毎日営業している映画館がなく、徳島まで見に行っている。地元で映画が見られるのはうれしい」と話す。

     今年は市文化体育館なども会場になり、「あったまら銭湯」のほか、人気漫画が原作の「亜人」など、島がロケ地になった作品を上映した。浜辺では島特産の瓦やお香に触れてもらうワークショップも開かれた。今回初めて海辺で宿泊できるテントも設置。家族で利用した東大阪市の会社員、橋爪竜一さん(37)は「上映が夜遅くに終わるので、それから子供を連れて帰るのはしんどい。海を見ながら、のんびりできた」と喜んだ。

     今年の参加者は約5000人で、年々増えている。大継さんは「島の魅力を感じてもらえるイベントを充実させ、全国的に知られる映画祭に発展させていきたい」と話す。

     ■  ■

     30年以上の歴史を持つ野外映画祭もある。今月27日~8月19日に長野県原村で開かれる「星空の映画祭」だ。1984年、宮崎駿監督の長編アニメ「風の谷のナウシカ」に感動した地元のペンション経営者が「野外でこの映画を見たい」と熱望したことから始まった。06年に1度閉幕したが、子供の頃の体験を忘れられなかった地元出身の若者らが10年に復活させた。昨年は全国から約7000人が訪れ、周辺の宿泊施設もにぎわった。

     原村は「星の降る里」として知られ、会場は標高1300メートルにある八ケ岳自然文化園だ。中学生の時にここで「ジュラシック・パーク」を見たという実行委員長の武川寛幸さん(38)は「周りは木に囲まれていて暗く、『いつ恐竜が出てくるんだろう』と怖くて仕方なかった。映画を『見る』というより、『体感する』のが野外上映の魅力」と語る。雨のシーンを見ていたら現実でも雨が降り出したり、霧が立ち込めて幻想的な雰囲気になったり。「大自然が与えてくれる演出が映画を更に面白くしてくれる」と力を込める。地元の小中学生は入場無料で、映画祭を引き継いでくれる次世代の育成が課題という。

     今月27~29日には、富士山を望む山梨県の本栖湖キャンプ場周辺で「湖畔の映画祭」が開かれる。15年に始まり、「新しい才能を応援したい」と、大手の配給ルートに乗らないインディペンデント映画を中心に上映するのが特徴だ。実行委の藤井宏二さん(40)は「個性あふれる刺激的な作品を届けたい。大自然の中で非日常の体験をしてもらえたら」と呼びかけている。


    星空の映画祭(7月27日~8月19日)

    問い合わせ=info@hoshizoraeiga.com

    湖畔の映画祭(7月27~29日)

    問い合わせ=03・5315・4108

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