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ニッポンの食卓

第3部 それって健康?/1 「無添加」表記、法的基準なし

消費者庁が措置命令を出した生活協同組合連合会グリーンコープ連合の表示=消費者庁提供
加工食品の原材料表示の一例。食品添加物名が並んでいるが、用途は分からない=小島正美撮影

 ●書かれていても…

     スーパーやコンビニで売られている加工食品に「保存料・合成着色料不使用」との表示を見かける。保存料や合成着色料に不安なイメージを持つ消費者が多く、「無添加」という表記が安心感を呼ぶからだ。だが、その意味は本当に理解されているだろうか。

     浜松市の主婦(32)は8カ月の子供を育てている。子供の健康を考え、加工食品を買うときは、できるだけ表示を見るようにしている。こうした消費者は珍しくない。食品添加物メーカーで組織した「日本食品添加物協会」が昨年、全国1600人(15~74歳)を対象に実施したウェブアンケート調査によると、加工食品を購入するときに注意する表示の上位三つは、保存料(19%)、合成着色料(16%)、人工甘味料(12%)。また、50%の人は「無添加」や「保存料不使用」と表示された食品は、表示のない食品に比べて、「安全だと思う」「やや安全だと思う」と答えている。

     しかし、主婦は「無添加」や「保存料不使用」との表示に迷ってしまうという。例えば、「保存料不使用」と記されている加工食品の表示欄。保存料はないが、グリシン、pH調整剤、トレハロース、アンモニウムミョウバン、酸化防止剤(ビタミンE)などと記されている。「不使用、無添加と記されていても、他に何かが使われているかもしれない。表示を見てもどんな物質をどういう目的で使っているか、よく分からない」

     日本食品添加物協会によると、グリシンはアミノ酸の一種で、食品の日持ちを長くするために使われる。pH調整剤は細菌の増殖を抑える保存効果があり、クエン酸や酢酸ナトリウムなど約30種類ある。トレハロースは天然甘味料だ。つまり、「保存料不使用」と書かれていても、日持ちさせるためにグリシンやpH調整剤などの添加物が使われているのだ。主婦は「初めて知った」と驚き、「酸化防止剤(ビタミンE)と表示されているように、『日持ち向上剤(グリシン)』などと用途名と物質名の両方を記載すれば、消費者に分かりやすい」と要望する。

     ところが、食品表示法では、グリシンは保存料の扱いになっていない。保存料という名で記載が義務づけられているのは「ソルビン酸」「安息香酸」「プロピオン酸」など約30種類。グリシンやpH調整剤は、たとえ保存目的で使っても、法で規定されていなければ、保存料不使用と記載することができてしまう。

     ●逆に塩分過剰に

     「新しい食品表示がわかる本」を著した消費生活コンサルタントの森田満樹さんによると、無添加と表示された食品の中には、保存料や日持ち向上剤も使わず、塩や砂糖を加えて味を濃くして日持ちを高めている例もある。むしろ、ただ無添加だということだけで選ぶと、塩分の取り過ぎや保存方法に問題があれば食中毒の原因になることもあり得るというのだ。森田さんは「食品添加物は、安全性が評価されたものや長い食経験のあるものだけが国に認められて使用されていることが意外に知られていない」とむやみに不安に陥らないようアドバイスする。

     「食品添加物 ほんとうの話」を著した三輪操・元相模女子大学教授は、「化学調味料不使用」という表示も誤解を招くと訴える。

     化学調味料は、うま味調味料のことで、昆布やかつお節などから抽出されたグルタミン酸やイノシン酸がある。食品添加物として国から許可されている。かつてはグルタミン酸は石油から作られていると誤解されたこともあるようだが、「日本うま味調味料協会」によると、サトウキビのしぼり汁にグルタミン酸生産菌を加えて発酵させ、その発酵液から抽出したもの。つまり、通常の植物に含まれているグルタミン酸と同じもので、体内でも同じように代謝・分解される。

     三輪さんは「食品添加物と聞くと特別な化学物質というイメージを持つ消費者がいるようだが、グルタミン酸はトマト、チーズ、みそにも含まれている」と説明する。食品添加物のうま味調味料を避けたとしても、同様の成分を他の食品から摂取すれば、避ける意味はないというのだ。

     ●具体的対策見えず

     さらに、野菜ジュースの中には「無添加野菜ジュース」と表示されたものもある。表示欄に「香料、食塩を使用していない」と記されているが、食塩は食品添加物ではない。また、消費者庁の食品表示基準Q&Aでは、もともと添加物がいらない食品に「無添加」と表示することは不適切としている。野菜ジュースは香料がなくても作れるため、三輪さんは「香料や塩を使用しないだけで堂々と『無添加』と記載するのは消費者の誤認につながる」と指摘する。森田さんも「現状では無添加に関する法的な具体的基準がなく、事業者の判断で書きたい放題となっている」と事業者に改善を求めている。

     消費者庁は今年3月、「ハム・ソーセージに化学的な合成添加物は一切使っていません」との表示で販売していた生活協同組合連合会グリーンコープ連合(福岡市)に対して、実際には合成添加物が使われていたとして、景品表示法違反(優良誤認)で再発防止を求める措置命令を出した。消費者庁表示対策課は「わかりづらい表示は改善してほしい」と呼びかけるが、具体的な対策には至っていない。

        ◇

     食と健康をめぐっては、さまざまな情報が流れるが、本当なのかと思える疑問も意外にある。関心の高いトピックに焦点をあてた。【小島正美】=つづく

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