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きょうのセカンドオピニオン

ワイド版 味覚障害、改善策は?=答える人・笹野高嗣先生(東北大名誉教授・口腔診断学)

 「きょうのセカンドオピニオン」への相談で多いのが「味がしない」「苦い味しかしない」といった味覚に関する悩みです。口の中の問題として、耳鼻科と歯科の両方にまたがる上、全国的にはまだ専門外来も多くありません。青山クオーツデンタルクリニック(東京都渋谷区)で、歯科領域から味覚障害の予防や治療に取り組んでいる笹野高嗣(たかし)・東北大名誉教授(口腔(こうくう)診断学)に聞きました。【高野聡】

     Q 腹膜手術後に異変

     後腹膜腫瘍手術後、味を感じなくなりました。舌の検査を受けたり、亜鉛不足かどうかを調べたりしましたが、異常はありません。口がよく乾きます。(高松市、男性、87歳)

     Q 口の中が粘つく

     口の中が苦いため食欲不振になり、体重が減少しました。口の中が粘つくので、うがいなどで粘りを取っていますが、食べ物が歯につきます。(東京都、男性、93歳)

     Q 胃酸抑える薬影響か

     胃の調子が悪く、味覚がおかしくなりました。胃酸を抑える薬を服用しています。検査では異常なしでした。味が感じられないので食事の満足感がありません。(奈良県、女性、57歳)

     A 昆布だしで唾液分泌促す

    うまみだけの障害も

     味は苦み▽酸味▽甘み▽塩味▽うまみ--という五つの基本の要素からなります。味覚障害には、味を感じなくなったり、感じにくくなったり、何も口の中にないのに味がしたりといった状態があります。

     検査で「原因不明」と診断されてしまう理由の一つに、味覚検査の方法があります。従来の検査は「うまみ」以外の基本4味が分かるか調べる「ろ紙ディスク法」が一般的でした。私たちは東北大でうまみ成分を試薬に使った新たな検査を開発しました。それで味覚障害を訴える人を調べたところ、基本4味は正常でも、うまみを感じにくい人が16%いました。ほとんどが高齢者でした。

    亜鉛不足が背景に

     味覚に関係する部位としてよく知られているのは、舌の表面にある「味蕾(みらい)」です。

     しかし、味覚は味蕾だけで成り立っているわけではありません。食べ物の味のほか、食事の時の感情や記憶、またおなかの調子などの情報が脳で統合されて感じるのが味覚です。船酔いで味覚がおかしくなるように、胃など内臓の感覚も味覚に影響します。おなかなどの手術の影響による味覚障害もあり得るでしょう。

     ただ、そうした例はごく一部で、主な原因は口の中の状態です。背景に多いのが、亜鉛の不足です。

     亜鉛は味蕾細胞の代謝に必要な栄養素ですが、高齢者が服用している薬の中には亜鉛を排出しやすくしてしまう副作用を持つものがあります。高血圧薬や抗不安薬、睡眠導入剤、胃酸抑制の薬などです。高齢者には味覚障害が多くみられますが、高齢であることよりも、多くの人がこれらの薬を使っていることが増加の要因と考えられます。

    薬が自律神経に作用

     こうした薬は自律神経(副交感神経)に作用するため、唾液が出にくくなって口が乾く「口渇(こうかつ)」の副作用があります。唾液には、食べ物を味蕾に運んだり、味蕾を保護して再生させたりする働きがあり、口渇で唾液が減ると味覚障害になりやすくなります。

     私たちが老人ホームの入居者(65~94歳)71人を調べたところ、3分の1以上に味覚障害があり、その全員が正常な味覚の人と比べて唾液分泌量が半分ほどに減っていました。薬をやめれば唾液分泌は回復しますが、慢性疾患なので、そういうわけにもいきません。

     そこで私たちは、唾液の分泌量を増やして味覚障害を改善する方法を考案しました。梅干しを食べると唾液が出るのは有名です。味覚で唾液分泌神経が刺激されることを「味覚-唾液反射」と言いますが、この刺激に適しているのが「うまみ」です。梅干しなどの酸味の刺激が一時的であるのに対し、うまみの刺激には持続性があるからです。

     うまみ物質としては、昆布などのグルタミン酸、かつお節などのイノシン酸、シイタケなどのグアニル酸の3種類が知られていますが、刺激に最適なのはグルタミン酸です。昆布だしをドライマウスの患者20人に使ってもらったところ、16人で改善が見られました。効果が出るまでの期間は2週間~1カ月でした。昆布だしは、料理で使うよりも濃い方が効果があります。

    歯磨きにも効果

     頭頸部(とうけいぶ)がんに対する放射線治療に伴うドライマウスなどに対しては、公的医療保険が使える治療薬があります。ただし、これらの薬は副交感神経を刺激するため、全身に作用し、火照りやめまいなどの副作用もあります。

     昆布だしの方法は、身近な食材を活用でき、副作用の心配もないという利点があります。そのほか、こまめな歯磨き、食べ物をよくかむ習慣、耳たぶの下からあごの下にかけての唾液腺のマッサージも、唾液分泌の回復に効果的です。

     味覚障害の患者数は2003年の日本口腔・咽頭(いんとう)科学会の調査で24万人とされています。全国の大学病院には味覚外来を設置しているところもあります。気になる症状があるようなら、近くの味覚外来を調べて、受診してください。

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