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どうすれば安全安心

子供の川遊び、盲点は 溺れる危険、浅場でも

川で流された時の注意点

 夏休みを前に、河原で家族や仲間とバーベキューや水遊びを計画中の人もいるだろう。川遊びは楽しみながら自然に親しめる半面、あなどればリスクは大きい。特に、子供の川での水死者数は海の約2倍となっている。川の怖さを知った上で、事故を未然に防ぐにはどうすればいいのか。【石塚孝志】

    ライフジャケット着用を/立ち上がろうとしない/救助はまず陸上から

     一見、流れが緩やかで浅そうな川に入ろうとして足を滑らせ、ヒヤリとした経験を持つ人もいるのではないだろうか。

     公益財団法人・河川財団が警察庁の2003~17年の中学生以下の子供の水死者数を場所別に分析したところ、海の23・1%に比べ河川は47・3%と約2倍だった。

     河川での水難事故に詳しい岐阜大名誉教授の藤田裕一郎さん(河川工学)によると、川の流れの速さや受ける力は水深が深くなるほど大きくなり、水深が2倍になると速さは1・5倍以上、受ける力は2・5倍以上になる。つまり、深くなるに従い、危険は増す。

     例えば、水が膝までしかない場合と、胸まで達している場合を想像してほしい。後者は、川の流れによって水圧を受ける体の表面積が大きくなり、さらに浮力が増して足が浮きやすくなっている。そのため、たとえ少しずつ川に入っても、不安定な石や滑りやすいコケなどを踏むと、体を支えきれずにあっという間に流される。親が目を離したすきに、川遊び中の子供が流されたという事故は、こんな時に起きている。

     深場では流れが穏やかに見えても、表層と中層、川底で流れが異なる。渦を巻いて川底に引き込む流れの場所があり、泳ぐのは避けたい。「例えば、岐阜市の長良川にある千鳥橋の上流には、深さ18メートルのフチがあり、川底には高さ6メートルの『根岩』があって、瀬から流れ込む水で地元では『左巻き』と呼ばれる渦が生じています。巻き込まれたら、ライフジャケットを着装していても、すぐに浮上するのは困難です」と藤田さん。川では海よりも浮きにくいことを忘れてはいけない。

     深場以外にも、危険な場所がある。用水路などの取水口や堤防の下、橋脚などの工作物付近は、複雑な流れが生じているため、事故が起きやすい。足を滑らせて転落したり、飛び込んだりした後に、川底に向かう流れに巻き込まれると、水面になかなか上がれない。近づかない方が無難だろう。

     「川の事故は瞬間的に発生し、水没して息ができなければ約1分で致命的な状況になる」と話すのは、河川財団子どもの水辺サポートセンター研究員の菅原一成さん。実は浅場でも危険があり、子供から目を離せないという。イラストを参照してほしい。

     菅原さんによると、歩行できるような比較的浅い場所でも流されることがあり、焦って水の中で立ち上がろうとすると、足が川底の石や岩などに挟まれる恐れがある。そのまま流れに押されると、水面に顔を出せなくなる。

     ライフジャケットを着用していれば、流れに逆らわずにあおむけになって足を上げて下流に向け、岩などの障害物を避けながら浮き続けるのが有効だ。流れが穏やかな場所にたどりつくか、救助を待つことで難を逃れる可能性が高くなる。未着用の場合は、より危険が増す。流れに逆らわないのを基本に、状況に応じて泳ぐなど、落ち着いて判断したい。

     救助の際の2次被害をいかに避けるかも考えなければいけない。同財団が新聞などで報道された03~17年の水難事故を分析したところ、何らかの救助活動が行われたのは約40%で、そのうち約15%で2次被害があった。その多くは、救助した人が死亡したり、行方不明になったりする重大事故だった。

     菅原さんは「飛び込んで助けに行くのは最も危険度の高い救助法です。助けようとした人が流されたり、おぼれた人が抱きついてきて、一緒におぼれたりするケースが少なくない」と指摘する。では、どうすればいいのか。「人が流された」と叫んで周囲に知らせると共に、(1)声かけをして安全な場所へ誘導する(2)棒や釣りざおなどの長い道具を使って差しのべる(3)救助ロープやペットボトル、クーラーボックスなど浮く物を投げる--など、まずは陸上から救助ができないかを考えてほしいという。

     子供が川に入るとき、ライフジャケット着用は当然だが、大人も身に着けていれば、おぼれる危険度を大きく下げることができる。菅原さんは、(1)流れがある(2)深みがある(3)増水する恐れがある--という三つのリスクのうち一つでも該当する川では着用を勧める。

     言わずもがなかもしれないが、川に行く前に、準備はしっかりしておきたい。まずは天気のチェックだ。中州でキャンプをしていると、急な雨で川が増水した場合、水没して流されてしまうこともある。水に入る時は水着などの乾きやすいものを着用すると、体温を余分に奪われずに済む。靴は、足を守るためにかかとがしっかり固定され、川の中で脱げにくく動きやすい運動靴などがおすすめだ。

     川に着いたら、周囲に看板があるか注意しよう。上流にダムがあって、放流があるときの警報や、急に深くなっている場所などが書かれている場合もある。また、急な増水に注意するため、スマートフォンなどで上流の天気を確認したり、地元の人に川の特徴を教えてもらったりすることも有効だ。

     また、急激な運動をすることで筋肉がけいれんを起こすこともあり、川に入る前に準備体操をしておこう。もちろんアルコールを飲んで泳ぐのは厳禁だ。注意が散漫となり、体の自由も利かなくなる。

     最後に、藤田さんはこうまとめてくれた。「川という自然性の高い非日常空間に行くという認識をまずもってほしい。一律に川へ近づくなというのではなく、自分たちの力量にあった安全な場所で川に親しんでほしい。川の流れは常に変化しているので、ライフジャケットなどの安全対策や心の準備をしていれば、流されても重大事故に遭う率を大幅に下げられます」

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