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震災小説の類似表現問題 文学的価値を議論せよ=武田徹

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 津波被災地を描いて第61回群像新人文学賞を受賞、講談社の文芸誌「群像」に掲載された小説「美しい顔」が注目を集めている。石井光太著「遺体-震災、津波の果てに」、金菱清編「3・11 慟哭(どうこく)の記録」といったノンフィクション系作品と酷似した記述が本文中に多く見つかったからだ。

 この「コピペ問題」が話題になり始めた時、筆者はひとつの仮説を立てていた。「美しい顔」は被災をステレオタイプの悲劇として伝えたがるマスメディアに反感を覚えつつも、メディアが求める記号性を演じてしまう被災当事者の屈折した心理を描く。そこで注目すべきは著者の北条裕子氏が現実の被災地を一度も訪ねていないと公言していることだ。つまり記号化の違和感を描く小説自体が、実体験ではなく、著者が触れてきた「記号化された東日本大震災」像の上に構築されている。

 こうしたねじれた構図を採用した「美しい顔」は、被災者の心理描写やマスメディアの暴力性の告発うんぬんよりも、記号化過程をさまざまに織り込んでしまう高度情報化時代の災害のリアリティーを小説化しようとした点でこそ評価されるのではないか。

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