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メディア時評

記者の働き方改革は?=藤田結子・明治大教授

 毎日新聞6月29日夕刊の「『高プロ』創設 『使用者都合の法律』 国会傍聴の過労死遺族」は、子や夫を過労死で亡くした遺族たちの無念な気持ちや表情を伝える意義ある記事だ。NHKの記者だった佐戸未和さんの母も遺族として活動している。

     マスメディアが信頼を失っているというが、その理由の一つにダブルスタンダードがあるだろう。過労死を報道しながら、社内の過労死は隠す。だから、先の記事をみても「どうせ記者も長時間働いているんじゃないの」とつい疑ってしまうのだ。

     以前、西日本新聞が育児中の男性記者による「新聞記者が1カ月『ノー残業』に挑戦した結果……」(2015年10月21日朝刊)という興味深い記事を出した。試験的に、勤務時間を午後6時までにしてみたところ、書いた記事の数は残業をしていたときとほぼ同じだったという。この記事への反響は大きかったようだ。

     こんな記事が掲載されていれば「新聞社も努力しているのだな」と新聞への信頼も増す。若者の間ではYouTubeに「○○やってみた」という自作動画を投稿するのが人気だから、それもいいだろう。男性記者が夜7時には帰宅し家事や介護をやっている姿は、同僚に謝りながら定時退社しクタクタで家事をする女性たちの共感を呼ぶだろう。

     人は自分が属する業界の独特の慣習行動を身体化する、と社会学者ブルデューはいう。記者は長時間労働を慣習としてきた。たとえば事件事故の被害者の写真を求めて、夜遅くまで一軒一軒回るという。だが、その情報は今の社会や読者にとって意味があるのか。新聞の売り上げに貢献するのか。家に帰らぬ記者の家族に負担をかけていないのか。深く考えず、ただ慣習で長時間労働をしてはいないだろうか。

     6月30日の社説は、甘いとはいえ残業時間の上限(繁忙期などは月100時間未満)を法律で明記した意義は大きいと評価していた。過労死ラインは月80時間なのにだ。新聞社もまだまだ働き方改革の余地はありそうだ。(東京本社発行紙面を基に論評)

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