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東南アジア探訪記

eスポーツ・ドリームをつかめ アジア大会のインドネシア代表ヘンドリさん

アジア大会に向けスマートフォンで練習するeスポーツのインドネシア代表、ヘンドリ・ハンディスリャさん=ジャカルタで2018年7月4日午後4時、武内彩撮影

 インドネシアの首都ジャカルタで8月18日に開幕するアジア大会で、コンピューターゲームによる対戦競技「eスポーツ」が初めて公開競技に選ばれた。スマートフォンの利用者が国民の半数近くにのぼるといわれるインドネシアでは、ゲームの人気は高い。ただ現地メディアでeスポーツを取り上げているのはゲーム関連のネットメディアくらいで、一般市民の認知度が高いとは言えないようだ。それでも地元開催のアジア大会で公開競技に採択されたことで、代表選手は「優勝を狙う」と意気込んでいた。

 ヘンドリ・ハンディスリャさん(34)は、カードゲームの「ハースストーン」の代表選手だ。今大会は6タイトルのゲームで競われ、うちハースストーンを含む3タイトルは個人戦。ハースストーンには他に日本、香港、キルギス、ベトナム、タイ、インド、サウジアラビアからの参加が決まっている。

 ジャカルタ市内にある30平方メートルもないマンションの一室が、ヘンドリさんが所属するチームの「ベース(基地)」だ。パソコンが10台ほど並んだ室内では4~5人が練習に励んでいた。

 ヘンドリさんは、スポンサー企業の名前が全面に印刷されたTシャツにハーフパンツ、サンダルの軽装で迎えてくれた。普段の練習に必要なものはスマートフォンだけだ。「スマホさえあれば誰でもできるというのがゲームのいいところ。特別にお金がかかる用具や施設がいるわけじゃない」と一笑された。

 eスポーツの選手生命は長くないと言われる。34歳のヘンドリさんは高齢の部類に入るが、チーム内で代表入りしたのは一人だけ。「まだまだ一線で活躍できる。そのうち若い世代が出てくるだろうけどね」と自信をのぞかせた。

 ハースストーンは、それぞれ特徴の違うキャラクターの描かれたカードの組み合わせで対戦相手を倒す戦略的なゲームだ。相手の戦略や得意・不得意を研究し、いかに攻略するかが勝因になるという。「対戦前に相手について情報収集して分析しておくことが大事なんだ。普段はライバルでもあるインドネシアのプレーヤーが、大会中はコーチや戦略担当役として助けてくれることになっている」と明かす。日本代表とは過去にも対戦経験があるが、国際大会への出場が少ない選手の情報収集は難しく頭を悩ませている。

eスポーツ・ドリーム

マンションの一室でパソコンに向かい練習するeスポーツのインドネシア人選手=ジャカルタで2018年7月4日午後4時16分、武内彩撮影

 ゲームに夢中になったのは中学時代。子供の頃は、チェスのプロ選手だった父親に習い、チェスでインドネシアのジュニア代表に選ばれたこともある。頭脳戦は当時から得意だった。学生時代からゲーム大会では上位入賞者の常連だった。ゲームセンターでは、彼が来れば宣伝になるからと利用料金の支払いを求められたことはなかったという。

 ヘンドリさんは現在、友人と始めたインテリア会社や家族経営の健康器具などの販売会社を運営する傍ら、練習に1日8~9時間を割く。チームから支払われるプロゲーマーとしての給料だけでも生活できるが、両立したいのだという。「ゲームは勝たなければというプレッシャーが大きくストレスがたまる。仕事でバランスを取った方がいい」と打ち明ける。

 大会で獲得した賞金は、昨年だけで5000ドル(約56万円)になった。ジャカルタの最低賃金が月約3万円という中、大金を獲得するヘンドリさんはインドネシアの選手にとって憧れの存在だ。世界で活躍できれば賞金額は桁違いに大きくなり、人気ゲームの世界大会は優勝賞金が10億円を超えることもある。eスポーツの可能性はかなり魅力的だ。

 チームメートも多くは夢をつかもうとする10~20代の若者で、時には共同で合宿生活を送りながら練習に励んでいるという。ヘンドリさんたちにとってeスポーツは、ただ楽しいだけのゲームではない。将来や生活といった勝敗以上のものが懸かっているようだ。【武内彩】

8月18日にジャカルタで開幕するアジア大会のマスコットが街角に設置され、歓迎ムードを盛り上げている=ジャカルタで2018年4月、武内彩撮影

武内彩

ジャカルタ支局記者。1980年和歌山県生まれ。2005年に毎日新聞に入社、神戸支局を振り出しに大阪社会部の在籍が長かった。東南アジア好きは学生時代のフィリピン留学以来。担当地域はインドネシア、フィリピン、マレーシア、シンガポール、オーストラリアなど。

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