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群馬百湯

/67 藪塚温泉(太田市藪塚町) 近場に非日常空間 義貞にちなむ隠し湯伝説も /群馬

 由来は古い。あまたの温泉がある群馬でも、そのものずばり「温泉神社」はここ藪塚だけという村社があり、その縁起によれば奈良時代の高僧・行基がその効能を全国に触れ回ったというから、歴史はゆうに1200年を超える。

     さして時間をかけずに訪れることができ、家族や職場の面々としばし日常を忘れられる空間--。太田や桐生、栃木の足利など渡良瀬川沿いに住む人々にとって、藪塚温泉は長くそんなすてきな場所だったらしい。

     たたき上げの機織り職人だったという桐生の古老が、絶えず口元に笑みをたたえながら「藪塚慰安旅行」の楽しさを語った様子を、忘れられずにいる。世が高度成長に向かう頃、機屋の旦那の引率の下、工場総出で出掛けたらしい。当時は土産物屋や飲食店が軒を連ねる「にぎやかな温泉街だった」というが、今は田園に囲まれて3軒の温泉宿が残る、こぢんまりとした温泉郷である。

     それでも「藪塚慰安旅行」の風は今も健在のようだ。3軒で最も規模の大きい「ホテルふせじま」(客室数63)は、忘新年会、歓送迎会のシーズンには、太田や桐生、足利から大型バスで訪れる職場ぐるみの一行でにぎわうという。温泉文化は不滅である。

     湯は重炭酸泉で無色透明。ほとんど無臭。ホテルの営業部長として、利用客のもてなしの先頭に立つ柳沢香織さんによると「メタケイ酸を豊富に含み、美肌の効果が高い。湯温も低めなので長湯がお勧め」。6階建ての屋上に設けられた展望風呂からの眺めも絶景である。

     藪塚の湯には、南朝の武将、新田義貞が鎌倉攻めの折、傷ついた兵を休ませたとの伝承があり、「新田の隠し湯」の別名も持つ。一説には無類の戦下手ながら、敗れても敗れてもなぜかもり立てる人が後を絶たなかったという義貞が、坂東武者を従えて湯の中で怪気炎を上げていたなどと想像すると、興趣は一層増すのである。【高橋努】


     <メモ>

     藪塚温泉(太田市藪塚町)。東武鉄道藪塚駅から徒歩約10分。ホテルふせじま(0277・78・2321)は日帰り入浴1200円(10時~16時)。宿泊は8500円(4人利用)から。

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