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身じまい自習室

/7 仏壇購入者の実態 「まずは仏さん」の理由 /東京

最近は住宅事情に合わせて壁型の仏壇も注目されるようになった=滝野隆浩撮影

 供養業界のためのビジネス情報誌「月刊仏事」7月号が「仏壇の消費者全国実態調査」の結果を発表していた。いわゆる「売れ筋」のデータで、なかなか興味深かった。

     発行元の鎌倉新書が運営するウェブサイト「いい仏壇」による実態調査。それによると、購入した仏壇の価格は「5万~15万円未満」が24%で一番多かった。都市に住む人は住宅事情もあるだろうし、転勤・転居も多い。いきおい、小型化や簡素化が進むのだろう。100万円以上のものを購入した人は、わずか3%だった。

     ネット経由の調査だから、価格が低めになるのは当然かもしれない。そう言えば、以前話を聞いた仏壇メーカーの担当者が嘆いていた。「昔は家を建てたら、その1割は仏壇の費用にするというシキタリがあったんだけどね。もう夢のまた夢の話だね」

     3000万円の家だったら、300万円ってこと? いつの時代のどの地方の話なのか、と思ってしまった。家の格式で、仏壇の格や価格も決まったのだろう。「選ぶポイント」を聞いた質問には、半数が「サイズ」と答えている。今はデザインとか価格とか店の接客態度とかより、まずは大きさで仏壇は決められる。

     九州の実家にはこぢんまりとした仏壇がある。13年前に父が亡くなったとき、母も私も本家の宗派すら知らなかった。そんな不信心な家であったけれど、葬儀を済ませたあと母が購入したらしい。父の位牌(いはい)が入り、家の居間の真ん中、固定電話機の横の棚の上に、当たり前のように置かれていた。そうなると、私も帰省すれば家に着くと、当然のようにまず線香をあげてカネを鳴らす。朝ごはんができると、自分たちが食べる前に仏さんに、とご飯を供える。

     不思議だ。東京の家ではそういう習慣は全くないのに、なぜか仏壇のある家に帰ると、体が「まずは仏さんに」と動く。線香のにおいをかぎながら、父や祖母の写真と短い会話を交わす。

     これを信仰だとは思わない。父の死後、カセットテープに録音して覚えた母と違い、私はお経すら知らない。だけど、あえて言えば、隣にいる母に見せているのだと思う。あなたの死後も、私はこうして、まずは仏壇に向かって毎日、手を合わせるよ、と。毎日か……おっくうだなあと、ちらりと思った。

     遺品業者の話によると、仏壇は高く売れるらしい。東南アジア向けのオークションがあって、そこでは日本製は人気なのだという。本来はお坊さんに来てもらって「魂抜き」の供養をしてもらってから出されるべきなのだが、悪質業者はそんな面倒をせずに高く売り飛ばしているらしい。不信心者はたくさんいる。【滝野隆浩・58歳】=次回は27日掲載

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