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映画「未来のミライ」 家族、人間への愛凝縮 /愛知

 待った甲斐(かい)があった。ある家族のごく私的な物語かと思いきや、いにしえから全ての人が同様に繰り返す壮大なループに思い至る傑作。「サマーウォーズ」や「バケモノの子」の細田守監督が3年ぶりに放った長編アニメーション「未来のミライ」には、身近な家族への、人間という存在への愛が詰まっている。

     とある都会の小さな家に暮らす4歳の男の子くんちゃんは、生まれたばかりの妹に両親の愛情を奪われ、戸惑いふて腐れている。そんな彼が中庭の小さな木の前で、次々と不思議な出会いを経験する。かつて王子だったという謎の男や、幼い頃のお母さん、青年時代の曽祖父。そして、未来からやってきたセーラー服姿の妹ミライに導かれ、くんちゃんは時空を超えた冒険の旅に出る。

     建築家のお父さんがデザインした家は、土地の高低差を使った洒落(しゃれ)た造り。庭や公園の緑は柔らかく、青い空が眩(まぶ)しい。加えて、未来の東京駅などCG映像も駆使した、多彩なアニメーションに魅了される。もちろん、くんちゃんも可愛い。監督は、お子さんが3歳と0歳だった時に物語を着想したそうだ。くんちゃんと同じく、妹が生まれ大いに荒れたお兄ちゃんを見て「人間って何歳でも愛なしでは生きられないんだな」と実感したという。

     くんちゃんの声を託した上白石萌歌さんは、オーディションで見つけた。「4歳の男の子の気持ちが18歳の美少女の中にあった」と監督が即決。同じ女優の姉・萌音さんへの嫉妬や葛藤などが「演技の深みになっている」と惚(ほ)れ込んだ。また、細田組初参加の福山雅治さんは、監督の飲み友達らしい。うまい酒を箱で買う福山さんの豪快さや器の大きさが、役柄にピッタリだと酒の席で依頼したという。他にも黒木華さん、星野源さんに麻生久美子さんら、実に豪華な声優陣だ。

     脚本に織り込まれたセリフの数々も忘れ難い。「子育てに願いは大事だよ」は、監督の義理のお母さんがおっしゃった言葉。さらに、自転車の練習中に飛び出す「遠くを見ろ!」は、間違いなく今作のキーワードだ。“未来”と謳(うた)いながら実は“今に繋(つな)がる過去”に思いを巡らされ、“遠く=未来”を見据える物語。カンヌ国際映画祭での上映も頷(うなず)ける。監督お見事! 20日から名古屋駅前のミッドランドスクエアシネマ他で公開。(大同大学准教授/フリーアナウンサー・小島一宏)

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